『こさめ』

藤の薄紫を
凍りつかせる
こさめの色
無情に
やわらかだから
逃げたくなる
でも暫く頬に
こさめを浴びたら
記憶の欠片のようなものが
ゆっくり浸透し
匂いと 空気と
むせる緑の場所を
ふとさがす
わたしたちの
基地
小さなリュックのにもつ
短時間の家出

こさめがそそぐと
雑草にさく小粒の花も
宇宙の ひとしずく
耳に伝わらぬ振動だけが
こさめを
こさめらしくしていたのに
やがて飛沫があがり
とおいゆめを跳ね返す

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ