風花の間

□苦手なタイプ【中】
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賑やかな声が屋台に響いた。

新八「俺がヤクザ?!そりゃあないぜ。 千歳ちゃん。」

左之「そうだよ、 千歳。新八はいいとしても、俺がホストはねぇよ。これでも俺たち高校教師だぜ。」

千歳「絶対嘘だ。めちゃくちゃ怖かったもん。」

左之「高校教師ってのは嘘じゃねぇぜ、なあ、斎藤?」

斎藤「ああ。。。」

さっきの私の言葉と、私を見つけられなかったことにしょげる斎藤くん。

(耳がぺたんこだ。けど構ってやんない!)

千歳「そうなんだ!ってまさか薄桜の?!」

左之「そうだ。俺も新八も教科は保健体育だ。」

千歳「薄桜の人事選考大丈夫?」

新八「顔に似合わずけっこうひでえよな〜。 千歳ちゃん。」

左之「俺は、気の強い女は嫌いじゃねぇぜ。」

斎藤「そういうところがホストと言われるのではないか。左之。」

千歳「斎藤くんは黙ってて!」

斎藤「はい。。。」

新八「ああ〜あ、鬼の風紀委員長が形なしだぜ。」

左之「 千歳、もう許してやってくれよ。斎藤も悪気があったわけじゃねぇんだしよ。」

千歳「う〜〜〜。」




あれからいろいろと誤解が解けたわけで、屋台の焼きそばを食べる私たち。

新八さんがまた次の食料調達に席を外すと、

左之「成績トップクラスの斎藤が、道場の夏合宿欠席してまで塾って、なんかおかしいとは思ったんだが、、、なるほどな。」

斎藤「おい!左之!」

左之「こんな美人の授業なら、俺もぜひ受けてみてえもんだぜ。個人的にな!」

斎藤「左之!いい加減にしろ!」

左之「いちおう聞いとくが、斎藤。おまえの女って訳じゃねぇんだろ?」

斎藤「っう!!!!! そういうことではない。。。まだ。。。だが、しかし!」

左之「なら、おまえにとやかく言われる筋合いはねぇよな?まだ。」

斎藤「それは、そうだが。。。今日の祭りは俺が誘い、高月先生は承諾してくれたのだ。待ち合わせていたのも俺だ。だから、あんたには遠慮してもらおう。」

左之「だとよ、 千歳。どうする?」

千歳「ん〜、待ち合わせてたのは本当だし、一応探しにも来てくれたからね。りんご飴買ってきてくれたら許そうかなぁ〜。」

斎藤「ほんとか!すぐに買ってくる!」

(尻尾ふりふり行っちゃった。)



左之「こりゃ、驚いた。あの斎藤をよくここまで手懐けたなぁ。」

千歳「え?手懐けてないよ。勝手に懐いてきたし。彼っていつもはあんな感じじゃないの?」

左之「ああ、ぜんぜん違うぜ。どちらかというと、寡黙で冷静沈着。女嫌いな面があるからな。ああいう姿はおまえの前でしか見せないんじゃないか?」

千歳「そういえば、塾でもそんな感じだわ。」

左之「だろ?あいつのあんな姿、俺も初めてだぜ。それだけおまえに惚れてるってことじゃねぇか?」

千歳「そ、それは、どうだか。。。///」

紅くなる私に、にっこり微笑む左之さん。

その大人の男の色気に、こっちがあてられそうだ。

思わずボ〜ッと魅入ってしまう。




そこへ新八さんが誰かを連れて帰ってきた。

「いやぁ〜、参ったぜ!もう少しで土方さんに見つかるところだった。」

そういう新八さんの後ろから、

「左之さんも!どこほっつき歩いてるの。戻ってこないから土方さんがうるさくてさぁ〜。はじめくんは約束があるとかで行っちゃうし。僕も逃げてきたけど。
って、誰?この人?まさか仕事サボって釣っちゃった感じ?」

この子、斎藤くんと試合してた、たぶん沖田って子だ。

私を品定めする様にニヤニヤ眺めて、

「ふ〜ん。なかなかいいんじゃない?僕も混ぜて、いいよね♪」

そういうと、私の隣にドカッと座った。

「僕は沖田総司です。左之さんより僕と一緒にお祭り周らない?だめ?」

綺麗な翡翠色の瞳が柔らかく笑い、左之さんとは違う爽やかな色気を感じる。

「総司、残念だがこの別嬪さんにはもう先約があってな。」

「えっ?左之さんのじゃないの?」

「ああ。ちょっといろいろあってな。なあ!」

意味あり気に私にウィンクする。

「一体なんなの?ねぇ?お姉さん?」

両側から顔を覗き込まれ、顔が火照る。

男の色気に挟まれて、ちょっと居た堪れない。

「あ、あの、ちょっといいですか?二人とも 近いので、もう少し離れて頂きたいのですが。。。」

ぷっと吹き出す沖田くん。

「なにそれ、可愛いなぁ〜!」

「やだ!ちょっと!」

私の腰に手を回し、ギュッと引き寄せる沖田くんの強い力に驚いていると、

「おい、総司。あんまりいじめるな。後で殺られてもしらねぇぞ。お、 千歳、髪の毛付いてるぜ。」

と、後ろから私の浴衣の襟足に手を遣り、張り付いた髪の毛を取る左之さん。

(ひぃぃぃ〜!なんなのこの2人!)

新八さんはたこ焼き食べてるし。。。

頼みの綱の斎藤くんは、またしてもいないし!

「ちょ、ちょっと二人とも!」

そう声を荒げた所へ、りんご飴片手に帰ってきた斎藤くん。

私にひっつく2人を見て、

「貴様ら!何をしている! 千歳から離れろ!」

思わずりんご飴を沖田くんにビュンッと振り下ろすが、それに気付いた沖田くんは空かさずりんご飴を白羽取りにする。

「今日の試合では負けたけど、そう何度も上手くいかないよ、はじめくん。」

ギッと睨む斎藤くんに、そう言って不敵に笑う沖田くん。

私は2人を見ながら、思わず

「私のりんご飴。。。」

そう呟くと、我に返った2人が私を見る。

「あれ?そういえば、はじめくん、約束があったんでしょ?えっ?もしかして、約束って?えっ?」

私と斎藤くんを交互にキョロキョロ見る沖田くん。

「はぁぁぁ〜。。。」

大きなため息をついてりんご飴を私に渡し、もう片方の手を引っ張る斎藤くん。

「高月先生、行こう。」

促され立ち上がる私のりんご飴を沖田くんがパッと取り上げる。

「あん!」

いきなりのことに、変な声が出てしまう。

ニヤリと笑う沖田くんが

「ふ〜ん。高月 千歳さんかぁ。可愛い声で鳴くんだね。はじめくんにはもう聞かせたの?」

「総司!不埒な物言いはヤメろ!それは高月先生のものだ。返せ!」

また睨み合いが始まる。

それを見ていた左之さんが、

「おいおい、2人とも。別嬪さんが困ってるぜ。
千歳、なんなら俺と周るか?そのほうが楽しいかもしんねぇぜ?」

またも左之さんの色気にぼ〜っとしそうになる私に、慌てる斎藤くん。

沖田くんからりんご飴をバッと奪う返し、私の手を引っ張り無言で歩き出す。

斎藤くんの後頭部を見てから、左之さんたちのほうを振り返ると、みんながひらひらと手を振っていた。

新八さんが大きな声で、

「今度、道場に遊びに来いよ!」

というので、どう返事をしようかと考えていると

「絶対に行かん!」

斎藤くんが大きな声で返事をした。
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