蒼の間

□和
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平助からあと15分で到着との連絡があり、一気に緊張感が出る。

若干1名、まだ欠伸をしてるが...
今は気にすんじゃねぇ、俺。

到着した車2台から、客人をまず応接室へ案内し名刺交換を済ませ、茶会へ。

段取り通り移動すると、赤い番傘の下には和服姿の女性が凛と立っていた。

浅葱色の着物は桜の模様が流れるように描かれており、袖や裾に向かって浅葱色から紫色へと変化する生地の色が薄紅色の桜に多彩な表情を付けている。

黒髪は上品に結い上げら、細い首筋と富士額が妙に色香を漂わす。

客人にゆっくりと一礼し柔らかく頬笑むと、そっと椅子に座りお茶を立て始めた。

みな、その美しい姿に一瞬魅入っているのがわかった。

立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花ってか...

が、しかしだ!

てぇか、ちょ、ちょっと待て!他の奴らはたぶん気づいてねぇだろう。

いろいろと知らねぇからな。

けど、あれが今日の強力な助っ人だろうが、俺の心当たりのあった人物とのあまりのギャップに頭がついていかねぇ。

俺の考えが正しければあの和服姿の大和撫子は、波切だ。

俺の知ってる波切は、いつも眼鏡にひっつめ髪、薄化粧で無愛想でどこか近寄るなオーラを纏い、初日にからかう総司と殺気の攻防を繰り広げ他の奴らを凍てつかせたあの波切だぜ。

今、千年桜の下で柔らかい空気を醸し出し、優雅な手捌きでお茶を立てる日本美人とは似ても似つかねぇ。

これが流行りのギャップ萌えってえやつか...、確かに悪かねぇな。

たぶん他の奴らは気づいてねぇだろうし、ちょっと得した気分だな。
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