ノート別冊

□無題
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ああ、そうだ
今日は、月が綺麗なんだ。
「真田、」
「なんだ」
「屋上に行きたいんだ。一緒にきてくれないか?」
「あぁ、分かった」
別に真田をつれてくる理由もなかった気がするけど、その時はどうでもよかった。
今は夏だから、ドアノブがすこし生暖かかった。
なんだか、自分は何か忘れている気がする。
大切な事なのに、とても大切なのに、頭からそれが離れている
「おい、」
「え?」
「ぶつかるぞ?」
「え?・・・・・」
「今日は屋上に行かなくてもいいのではないか?何処かボンヤリしているぞ?」
「今日じゃなきゃ駄目なんだ・・・・」
「何故だ」
「月が・・・・綺麗だから、」
「は?」
何度も質問されていやになったのでそこで俺は答えるのをやめた。
自分でも分からない、今日の月は満月でもないのに、
分からない、自分が考えている事なのに、
「自分でも分からないんだ・・・・・・」
「?」
「今日は月に変化でもあったか?」
「今日は・・・・確か月蝕だ」
「・・・・・・・あぁ」
そうだ、今日は月蝕だったんだ。
でもだからと言って、何故見なければいけないんだ?
分からない・・・・・
今日は何故か廊下で誰ともすれ違わなかった。
そういえば、今何時だっけ?
真田はこんな時間までいた事が会ったか?
「真田、今何時だ?」
誰もいなかった。
これはなんだろう、夢?
「精市、早く行かないと、もう夜が明けてしまうぞ」
蓮二の声が聞こえたと思えば、色々な人の声で誰かは急かしてくる。
後階段を一段上れば、もう屋上なのに、その一段が何キロにも思えた。
「・・・・」
何故こうまでして俺は屋上にいかなければいけないんだろう
俺は、
「ぁ・・・・」
開けた扉から見えたのは、月蝕の始まった。月だった。
光が細くなっていく
「・・・・月蝕・・・・」
それが俺のみた光だった、
月が消えていくのを見ていた。
のに、
「・・・・」
俺は何も出来なかった。
涙が不思議と流れていた。
何故か皆の顔が頭を流れていく
何も出来ない?月に何をする?
普通、こんな事思わないはずなのに、
「・・・・・・皆・・・・」







声がする、何処か遠くで、月の光のなくなった暗闇で
皆の声がする、
俺の名前を呼ぶ
どうして?
目が開けられない、胸が苦しい
誰か、誰か、
「・・・・幸村!!!」
「大丈夫だよ、真田」
「・・・・・・」
月は自分だったのか、
命が消えてなくなる前に、皆が呼んでくれたのか、
「ありがとう・・・・」
「・・・・え?」
目に入ったテレビには、今日の夜月蝕がおきるという内容のニュースが流れていた。

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