V小説。
□早朝発の新幹線。
2ページ/2ページ
≪おまけ:新弥事情≫
あー、だりぃ…
翌日朝早いって言ってんのに、
強引でハイテンションな男友達に深夜まで飲まされて、
案の定俺は二日酔いと共に福岡に向かった。
まぁ、新幹線はいつものよぉに俺独りだし、
隣居ないし、
足投げ出して思っきし爆睡したら、多少酔いもさめんだろ…と思ってたけど、
こういう時に限って、なかなか眠りは訪れてくれなぃ。
ま、ゾジと瑠樺さんが変なテンションで絡んでくると面倒だから、寝てるフリしてるけど。
「わっ!!ちょっ、瑠樺さん狡い!!」
「狡かねぇよ。てかオマエの方がちっこぃんだから、俺不利だろ!?」
「だって瑠樺さん俺より手ぇ長いし力強いじゃん!!えぃっ!!」
「うっわ危ね!!バカ!!」
「痛たっ!!痛ぃって!!それなしっ!!」
俺がやっと少しウトウトしてきたとこに、
後ろ2人の賑やかな声が邪魔をする。
確かさっきまでこの2人、静かにゲームに没頭してなかったっけか…
「うぎゃっ!!くっそぉ…隙ありっ!!」
「残念でしたぁー。ぜってゾジには負けねぇ!!」
「ひゃっ!!うわっ!!」
こんな調子のバカップルに、さすがに痺れが切れてきて、
俺は重い腰を上げた。
「あのさ、前で咲人寝てんだからさぁ、ゲームくらぃもぉちょい静かに……って!!何してんだよっ!?」
後ろの座席に顔出してみて唖然。
どぉ言葉に表現したらいぃか分からないけど、
とりあえず、だぃぶ不自然な体制で瑠樺さんとゾジさんが絡み合ってる。
ぃや、取っ組み合ってる…
「ん??モンハン」
「そっ、モンハンっ」
「ぃや、どぉ見たってモンハンじゃねぇだろ!!PSP床に落ちてんじゃん!!」
「バカだなぁ新弥は。リアルモンスターハンターにPSPなんか要らないのっ♪」
「先に相手のモンスター捕まえた方が勝ち」
「はぁ……あ、そぉ…」
リアルモンスターハンター。
どぉせ暇をもて余したゾジーが思い付いた遊びなんだろぅけど、
くだらなすぎてかける言葉が見つからねぇ…
てか、こんな低レベルな遊びに本気で付き合う瑠樺さんも瑠樺さんだ…
「何??新弥もやりたぃの??」
「席離れてるから無理だろっ」
「あ、じゃあ、この勝負で負けた方が、新弥と対戦ねっ!!」
「っしゃ。ぜって負けねぇ」
「ぃや、全力で遠慮しときます。ご勝手にどぅぞ」
俺は、こんなんに巻き込まれてたまるかと、再び前に向き直って、目を閉じる。
少しでも寝て置かないと、ライブがツラくなる。
が、
「ぅあーっ!!ぎゃっ!!」
「このやろっ!!逃げんじゃねぇ!!」
「るかさんこそっ!!よけないでよっ!!えぃっ!!」
「ぞじをなんかにヤられるかっつーの、バーカ」
「えいっ!!このっ!!ぎゃあぁーっ!!」
「捕っまっえたぁ♪はぃ俺の勝ちぃ〜」
「だから瑠樺さん狡いんだってばぁ!!」
「狡かねぇよ」
「大人げなぃなぁ…」
「だって子供だもん。」
「ぷぅーっ」
絶えず、後ろのバカップルのそんな会話が聞こえてきたら、
眠れるものも眠れない。
「いぃじゃん。ココ触られんの好きだろ??」
「ぅん。好きっ…」
「だったら大人しく触られとけ」
「じゃあもっとちゃんと触ってよ…」
あぁ、耳栓か何か持ってくるんだった…
ただでさえ二日酔いで頭痛ぇのに、こんなやりとり聞いてたら余計に気分が悪い。
「わっ…ゔっ…んんっ!!」
俺がそんなことを考えながら、昨日の酒を後悔してると、
今度は前から小さい呻き声が聞こえた。
間違いなく柩の声。
でも、咲人は爆睡してるハズ。
「おぃ、どぅした!?」
俺は、柩の身に何かあったんじゃねぇかと心配して、前の席を覗き込む。
ギロリ。
その瞬間に、俺に向けられたのは、痛いほどに鋭い、咲人の視線。
あんなに疲れて良く眠ってたはずなのに、なぜかお目覚めのご様子。
見ない方がいぃこともあると分かっているのに、
無意識にすべてを目に焼き付けてしまう俺。
まず、隣にいるはずの柩の姿が見えない。
ぃや、足元はちゃんと見えてるけど、上半身が、毛布に隠されて、倒れてる。
そんな柩の上半身と、咲人の膝を覆う毛布の下で、
何が行われているかは、あまりにも明らかで、
「この子ったら俺の膝で寝ちゃってんです」っていう苦しい言い訳をするには、
あまりに不自然に、咲人の手が上下左右に乱暴に動いてる。
「んっ…んんっ!!」
微かにだけど、毛布の下から柩の呻き声も聞こえる。
「はぁっ…はぁ…」
表情こそ冷静を装ってるものの、
息が荒くなって、額に汗を滲ませてる咲人。
ギロリ。
真っ昼間の新幹線の中ではあり得ないこの目の前の光景に、俺が動けずにいると、
再び咲人が俺を睨み付けてきた。
「あ…ぇっ…と…」
「何??」
「あ、ぃや、何でも…なぃ…です…」
「見ないでもらえる??」
快感を押し殺して、毒をたっぷり込めて、小声で囁く咲人。
「あ…ごめん…」
なんで俺が気ぃ使わなきゃいけなぃんだか分からないけど、
謝る理由もなぃハズだけど、
感じてるのを顔に出さないように必死な咲人が、めちゃくちゃ可愛ぃと思ってしまったのも事実だけど、
とりあえず俺は、何も見なかったことにして、眠ることに意識を集中した。
でも、結局福岡まで眠りは訪れず、
二日酔いを引きずったままの、寝不足の体でライブに挑むことになったのは、言うまでもない。
ついでに、福岡の駅で新幹線を降りるや否や、
柩が突然俺に殴りかかってきた理由を、誰か教えていただきたい。