V小説。

□早朝発の新幹線。
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≪おまけ:新弥事情≫



あー、だりぃ…

翌日朝早いって言ってんのに、

強引でハイテンションな男友達に深夜まで飲まされて、

案の定俺は二日酔いと共に福岡に向かった。

まぁ、新幹線はいつものよぉに俺独りだし、

隣居ないし、

足投げ出して思っきし爆睡したら、多少酔いもさめんだろ…と思ってたけど、

こういう時に限って、なかなか眠りは訪れてくれなぃ。

ま、ゾジと瑠樺さんが変なテンションで絡んでくると面倒だから、寝てるフリしてるけど。

「わっ!!ちょっ、瑠樺さん狡い!!」

「狡かねぇよ。てかオマエの方がちっこぃんだから、俺不利だろ!?」

「だって瑠樺さん俺より手ぇ長いし力強いじゃん!!えぃっ!!」

「うっわ危ね!!バカ!!」

「痛たっ!!痛ぃって!!それなしっ!!」

俺がやっと少しウトウトしてきたとこに、

後ろ2人の賑やかな声が邪魔をする。

確かさっきまでこの2人、静かにゲームに没頭してなかったっけか…

「うぎゃっ!!くっそぉ…隙ありっ!!」

「残念でしたぁー。ぜってゾジには負けねぇ!!」

「ひゃっ!!うわっ!!」

こんな調子のバカップルに、さすがに痺れが切れてきて、

俺は重い腰を上げた。

「あのさ、前で咲人寝てんだからさぁ、ゲームくらぃもぉちょい静かに……って!!何してんだよっ!?」

後ろの座席に顔出してみて唖然。

どぉ言葉に表現したらいぃか分からないけど、

とりあえず、だぃぶ不自然な体制で瑠樺さんとゾジさんが絡み合ってる。

ぃや、取っ組み合ってる…

「ん??モンハン」

「そっ、モンハンっ」

「ぃや、どぉ見たってモンハンじゃねぇだろ!!PSP床に落ちてんじゃん!!」

「バカだなぁ新弥は。リアルモンスターハンターにPSPなんか要らないのっ♪」

「先に相手のモンスター捕まえた方が勝ち」

「はぁ……あ、そぉ…」

リアルモンスターハンター。

どぉせ暇をもて余したゾジーが思い付いた遊びなんだろぅけど、

くだらなすぎてかける言葉が見つからねぇ…

てか、こんな低レベルな遊びに本気で付き合う瑠樺さんも瑠樺さんだ…

「何??新弥もやりたぃの??」

「席離れてるから無理だろっ」

「あ、じゃあ、この勝負で負けた方が、新弥と対戦ねっ!!」

「っしゃ。ぜって負けねぇ」

「ぃや、全力で遠慮しときます。ご勝手にどぅぞ」

俺は、こんなんに巻き込まれてたまるかと、再び前に向き直って、目を閉じる。

少しでも寝て置かないと、ライブがツラくなる。

が、

「ぅあーっ!!ぎゃっ!!」

「このやろっ!!逃げんじゃねぇ!!」

「るかさんこそっ!!よけないでよっ!!えぃっ!!」

「ぞじをなんかにヤられるかっつーの、バーカ」

「えいっ!!このっ!!ぎゃあぁーっ!!」

「捕っまっえたぁ♪はぃ俺の勝ちぃ〜」

「だから瑠樺さん狡いんだってばぁ!!」

「狡かねぇよ」

「大人げなぃなぁ…」

「だって子供だもん。」

「ぷぅーっ」

絶えず、後ろのバカップルのそんな会話が聞こえてきたら、

眠れるものも眠れない。

「いぃじゃん。ココ触られんの好きだろ??」

「ぅん。好きっ…」

「だったら大人しく触られとけ」

「じゃあもっとちゃんと触ってよ…」

あぁ、耳栓か何か持ってくるんだった…

ただでさえ二日酔いで頭痛ぇのに、こんなやりとり聞いてたら余計に気分が悪い。

「わっ…ゔっ…んんっ!!」

俺がそんなことを考えながら、昨日の酒を後悔してると、

今度は前から小さい呻き声が聞こえた。

間違いなく柩の声。

でも、咲人は爆睡してるハズ。

「おぃ、どぅした!?」

俺は、柩の身に何かあったんじゃねぇかと心配して、前の席を覗き込む。

ギロリ。

その瞬間に、俺に向けられたのは、痛いほどに鋭い、咲人の視線。

あんなに疲れて良く眠ってたはずなのに、なぜかお目覚めのご様子。

見ない方がいぃこともあると分かっているのに、

無意識にすべてを目に焼き付けてしまう俺。

まず、隣にいるはずの柩の姿が見えない。

ぃや、足元はちゃんと見えてるけど、上半身が、毛布に隠されて、倒れてる。

そんな柩の上半身と、咲人の膝を覆う毛布の下で、

何が行われているかは、あまりにも明らかで、

「この子ったら俺の膝で寝ちゃってんです」っていう苦しい言い訳をするには、

あまりに不自然に、咲人の手が上下左右に乱暴に動いてる。

「んっ…んんっ!!」

微かにだけど、毛布の下から柩の呻き声も聞こえる。

「はぁっ…はぁ…」

表情こそ冷静を装ってるものの、

息が荒くなって、額に汗を滲ませてる咲人。

ギロリ。

真っ昼間の新幹線の中ではあり得ないこの目の前の光景に、俺が動けずにいると、

再び咲人が俺を睨み付けてきた。

「あ…ぇっ…と…」

「何??」

「あ、ぃや、何でも…なぃ…です…」

「見ないでもらえる??」

快感を押し殺して、毒をたっぷり込めて、小声で囁く咲人。

「あ…ごめん…」

なんで俺が気ぃ使わなきゃいけなぃんだか分からないけど、

謝る理由もなぃハズだけど、

感じてるのを顔に出さないように必死な咲人が、めちゃくちゃ可愛ぃと思ってしまったのも事実だけど、

とりあえず俺は、何も見なかったことにして、眠ることに意識を集中した。

でも、結局福岡まで眠りは訪れず、

二日酔いを引きずったままの、寝不足の体でライブに挑むことになったのは、言うまでもない。

ついでに、福岡の駅で新幹線を降りるや否や、

柩が突然俺に殴りかかってきた理由を、誰か教えていただきたい。
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