V小説。

□ありす一家。
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「将くんのバカバカバカーッ!!うあーんっ、おかぁーさぁーんっ!!」

ヒロトは1号と2号を持ったまま、再びNaoの元へと向かう。

Naoは台所で鼻歌を歌いながら料理をしていた。

フリフリレースのエプロンが眩しい。

「おかぁーさぁーんっ!!みんな遊んでくれなぃーっ!!遊ぼ遊ぼ遊ぼーっ!!」

ヒロトが台所で両手両足をバタつかせて駄々をこねた。

「こらっ!!」

Naoの厳しい声が飛ぶ。

「ヒロトっ!!火やら包丁やら使ってる場所で騒いじゃダメってお母さん何度も言ってるでしょうっ!!」

Naoはいつになく真剣な表情をヒロトに向ける。

「ふぇっ…だって、だって、将くんがぁ…」

「将ちゃんは今お勉強忙しいんだから邪魔しちゃだめって言ったじゃなぃのっ!!」

「うっ…だってぇ…」

「だってじゃなぃっ!!ごはんできるまで向こうでおとなしく待ってなさいっ!!」

「うっ…うっ…ふぇっ…うあーんっ!!」

Naoに叱られて、ついにヒロトは泣きながらトボトボとリビングに戻っていった。

「うあーんっ…えぐっ…えぐっ…うっ…あぁーんっ!!」

ヒロトは声を上げて泣きじゃくり、袖でガシガシと涙を拭っている。

「何??また怒られてんの??」

ちょうど出掛ける所だった沙我が通りかかった。

「うっ…ざぁぢゃあんっ…」

「ごめんね。あたしもぅ行くからっ。おかーさん、ちょっと行ってくるねぇー。ごはん要らないからっ」

「あぁ、はいはい。行ってらっしゃい。あんまり遅くならなぃようにねっ!!」

結局沙我も出て言ってしまい、ヒロトはまたポツンとリビングに独りきり。

手には人造人間のヒロト1号と2号。

「うっ…あーんっ!!誰も遊んでくれなぃーっ!!うあーっ!!」

「ただぃま、ヒロト」

「ふえ??」

優しいその声に振り返ると、そこには仕事から帰ってきたばかりの父、虎がヒロトを見下ろしていた。

キリッとしたスーツ姿に、ビジネス用の黒ぃカバンがよく似合う。

「おとぉーさぁんっ!!うあーんっ!!」

「どぉしたんだよ??ん??」

「えぐっ…うっ…あのね、みんなして俺のこと、邪魔者扱いしてぇっ…うっ…遊んでくれなぃのぉ…」

ヒロトは懸命に涙を拭いながら訴える。

「そぅかっ。よしよし。じゃあお父さんと遊ぶか??」

「へ??お父さんと??…ぅんっ!!遊ぶぅーっ!!」






そんな訳で、その後、夕食までの時間、たっぷりとヒロトに付き合わされたパパなのでした。

「ギュイーンッ!!ドッカンっ!!」

「…うわー、やられたー」

「だめだよっ、そんなに早くくたばっちゃっ!!2号必殺目つぶしパンチで反撃しなくちゃだめでしょおっ!!」

「…あぁ、よし、分かったっ」

「じゃあもっかい1号の攻撃ねっ!!行けっ!!1号っ!!ヒロトビームっ!!ビューンッ!!ビビビビーっ!!」

「…ひっ、ひっ、必殺…目つぶし…ぱーんちっ…」

「うぎゃっ!!くっそぉ、こっちは飛び蹴りグルグルボンバーだっ!!それっ、グルグルボンバーっ!!」

「わーっ…ねぇ、パパお風呂入ってきちゃダメかな??」

「だぁーめっ!!まだ2号元気あまってるでしょおっ!!」

「ぃや、もぉそろそろっ…」

「行けっ1号ぉーっ!!」

有須家の夜が、こうして更けてゆく…



end.
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