V小説。

□院内恋愛。
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「はぁい、次の方どうぞぉ」

LuLu総合病院、精神科病棟診察室。

ココが俺の職場。

育児ノイローゼの若い女性患者の診察とカウンセリングを終えて、俺は次の患者を呼んだ。

「よろしくお願いします…」

どこかで聞いた声だなと思い、机の上の書類から視線をあげると、そこにはよく知った顔があった。

「Yu-ki先生っ!!」

そこに立っていたのは、長身で金髪で色白のイケメン小児科医、Yu-kiだ。

「どうしたんすかっ!!精神病の子のカウンセリングでしたら診察時間外に伺いますケド…」

「いや、そうじゃなくてっ…俺がっ…」

「はい??」

「俺のっ…俺の診察してくださいっ!!」

「はぁ??」

何を言ってるんだろう、この人は…。しかし、妙にそわそわと落ち着かない様子を見せたかと思えば、急にひどく肩をすぼめてため息をついたりしている姿を見たら、まんざら冗談を言っているわけでもないらしい。

「まぁ、あの、とりあえず、かけてください」

俺がいすを勧めると、Yu-kiはゆっくりとそこに腰を下ろした。

俺はまっすぐに彼の目を見る。

今まで何度となく仕事で関わってきたけれど、こうしてよく見るとなんて整った顔立ちをしてるんだろう。

こりゃあうちのナースたちも黙ってないハズだ。

「で、何か悩み事ですか??」

俺は、いつものように、穏やかな口調で語りかけてみた。

「えっと、あの、最近、眠れないんです…」

「眠れない??あんなに多忙な生活をしているのに、何故でしょう??」

「考え事をしてしまうんです…毎晩、同じことばかり考えてしまってっ…」

「それはどんなことですか??仕事のことですか??患者さんのこととか…」

「違います。彼は医者です。」

「はい??」

確かに、少し病んでいるようだ。言っていることが全く理解できない。

「えーとつまり、その彼に関する悩み事で眠れないと…」

「…はい、そうです。」

「彼が医者だということは、仕事のトラブルですか??」

「違います。トラブってるのは俺の脳みそです。」

Yu-kiは、俯いたままの姿勢で、小さな声でボソボソと喋っていた。正直、こんなYu-kiを見たのは初めてだ。

「あの、Yu-ki先生、もうちょっとくわしくその彼とのことについて聞かせてもらってもいいですか??」

俺は、患者の心を開く時の優しい声色をフルに使って、Yu-kiに問いかけた。

「内科の研修医が、天使なんです…」

「……はぁ…」

「戒斗ってゆう名前なんです。華奢で、小動物のように愛くるしくて、笑顔がとっても可愛いんです…」

戒斗…。そういえば、そんな名前の新人が内科に配属されたという噂話を、ナースの口から聞いたことがあったような気がする。

「俺には、彼が天使に見えるんです。彼の事が頭からずっと離れなくて、最近仕事に集中できないんです。夜も眠れないし、食欲もあまりないんです。」

Yu-kiはいたってマジメそのものの顔をしてそう語った。

俺は笑いたい気持ちをグッと抑える。

「彼が俺を苦しめるんです。院内で彼を見かけると、俺は呼吸困難に陥る。息が苦しくなって、1秒と見つめていられないんです。」

「……なるほどね…」

「彼は悪魔だっ…何か不思議な力を持った悪魔なんだっ…それなのに俺の目には天使のように美しく映る。俺、頭がおかしいみたいです。狂ってるんです…。ねぇ、達郎先生。俺のこと調べてくださいっ!!」

いきなり、物凄い剣幕で両肩を摑まれた。こんな至近距離で、こんなイケメンドクターに、俺のこと調べてくださいだなんて……いやいや、キュンってする場面じゃないっ!!

「Yu-ki先生、病名、知りたいですか??」

「え、何も調べてないのに分かるんですかっ??教えてくださいっ!!」

まぁ、精神科医でなくたって、今の説明を聞いてたら誰にだってわかるだろうが…

「あなたの病名は、恋煩いですね」

「コイワズライ…」

「その通り。Yu-ki先生は、戒斗先生に恋をしている。それだけの話です」

「こっ…恋って…ふざけないでくださいよっ!!戒斗さんは、男ですよ??」

「同性を愛してしまうことなんて、全然珍しいことじゃないですよ。現に同性愛の悩みで俺の所に通う患者もたくさんいます。」

「違うっ!!俺はそんなんじゃないっ!!一時的に頭がおかしくなってるだけに決まってるっ!!ちゃんと調べてくださいっ!!」

Yu-kiが顔を真っ赤にして言う。…可愛い。少しだけ、悪戯してやろうか…

「じゃあ、お望み通り、カウンセリングをしてみましょうか。目を閉じて、精神を落ち着かせてください。心を無にして…」

俺が言うと、Yu-kiは素直に従った。息を整えて、必死に心を落ち着かせようとしているのが分かる。

「はい、それじゃあ、俺が説明する光景を想像してみてください。いいですか??」

「はい。」

「あなたは知らない人の部屋にいる。小奇麗なアパートの一室。どうやら一人暮らしの男の部屋らしい。誰の部屋なのか調べるためにあなたはあちこちを見回し、歩き回る。」

Yu-kiは瞳を閉じたまま、じっと言われたままを頭に思い描いている様子だ。

「物音がしたのに気付いて、あなたはその音の方向に向かう。バスルームへの扉と思しきドアが、半開きになっている。あなたは、そっと、気付かれないように中を覗く。そこに誰かがいる。誰がいますか??……そう、戒斗先生だ…」

俺がその名前を出した瞬間、Yu-kiの体がピクッと反応した。

「戒斗先生がこれからお風呂に入ろうとしている。まだあなたに覗かれていることには気付いていない。無防備に、服を脱いでいく。ネクタイを外して、シャツのボタンを上からひとつずつ外して…」

固く目を閉じたYu-kiが、口を半開きにして戒斗医師の脱衣シーンを頭に思い描いている。

妄想に耽る美男子を眺めるというのも、なかなか気分がいい。

「ハラリと、シャツが床に落ちる。彼の綺麗な上半身があらわになる。続いてベルトに手をかけ、それを一気に引き抜く。あなたはそれをじっと見ている。食い入るように見つめている。彼が下半身のボタンを外す。チャックを下ろし、全てを脱ぎ捨てようとしている。そこでふと、彼がこちらを見る。」

俺がそう言うと、まるで本当に戒斗医師に見つかったかのように、Yu-kiがハッと息を飲んだ。

こんなにいい反応を返してくれるとは、予想外だ。

「彼が、あなたを見つめる。少し潤んだ瞳をしている。上半身は裸で、下半身も中途半端に露出した格好で…。腰のラインがとても美しく、あなたは目を奪われる。戒斗先生があなたを見つめる。不思議そうな表情をした後で、にっこりと笑ってこう言う。Yu-ki先生もいっしょに入りますぅ??……」

Yu-kiの顔が、また赤く染まり、俺の期待していた通りの変化が、彼の身に起こっていた。

俺は、ニヤリと笑い、彼の傍に立った。

「いいですよ、目を開けてください。診断結果が出ました。」

Yu-kiが、ゆっくりと目を開けた。俺が、すぐ傍に立っていたのに少し驚いた様子だ。

「やはり、恋以外の何物でもないですよ。その証拠が、コレです…」

俺は、何気ない素振りでYu-kiの体の中心へと手を伸ばし、パンパンに自己主張しているそこを、ツツーッと指でなぞった。

「んあっ…」

な、啼いたっ…。大きな体を敏感に震わせて…。

「…ちょっ、何すんですかっ!!」

さらに顔を赤くしながら、思いきり腕を払われてしまったが、まぁ、可愛かったからよしとする。

「自分でもよく分かったでしょう??戒斗先生の裸を想像してこんなにしてるんです。あなたは彼に対して性欲を抱いている。つまりは恋愛感情がある。違いますか??」

「ちっ…がわないかも…しれないけどっ…」

「コレ、俺が慰めてあげましょうか??」

「結構ですっ!!俺、もう行きますっ…」

Yu-kiはそう言って急に立ち上がり、診察室を出て行こうとした。

「あ、Yu-ki先生っ!!」

俺が引き止めるのもお構いなしで、そそくさと出て行ってしまったYu-ki医師の後姿を見送りながら、俺は少しだけ反省した。

ちょっとセクハラが過ぎてしまっただろうか…

それから、ナースたちの噂によれば、戒斗医師は我がLuLu総合病院院長の、超お気に入り愛人候補らしいという事実を教えてあげた方が良かっただろうかと…

まぁ、どっちにしろ近いうち、彼はまた懲りずにここを訪れるに違いない。





続く。

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