V小説。
□ありす一家。
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「さぁーあーちゃーんっ!!あぁーそぉーぼぉーっ!!」
姉の部屋に続く廊下をパタパタと走りながら、ヒロトが大きな声で沙我を呼び、ガチャリと沙我の部屋のドアを乱暴に開けた。
「ねぇ、さぁちゃんさぁちゃーんっ!!1号と2号で遊ぼぉーっ!!」
「ちょっwwヒロトっ!!入る時はノックしてって何度もっ…」
沙我はまだ制服姿のまま、鏡の前でメイク直しをしていた所だった。
「あのねさぁちゃん、俺1号だからね、さぁちゃんは2号だよっ、はいっ!!」
明らかに面倒くさそぅな表情の沙我に、ヒロトは無理矢理2号を押し付ける。
「何これ??ロボット??」
いかにも小学生の手作りな紙製のその物体をまじまじと眺めながら、沙我が聞く。
「違うよぉっ!!さぁちゃん頭悪ぃなぁ…1号と2号はね、人造人間なんだぜっ!!」
「やっぱロボットなんじゃん…」
「違うよっ!!人造人間は人造人間っ!!」
あぁ、そぉいやコイツ最近、ドラゴンボールハマッてたんだっけ…と、沙我がふと思い出す。
「弱そうだなっ…」
少し力を入れて持っただけで、簡単に潰れてしまぃそぅな2号を見つめながら、沙我がボソッとつぶやく。
「弱くないっ!!1号と2号は最強なのっ!!こっからビームも出るんだぜっ!!口から火も吹くんだからっ!!」
ヒロトが必死の説明だ。
もはやドラゴンボールなのかウルトラマンなのかゴジラなのか訳が分からない。
「スキありっ!!バシッ、ドシッ、飛べぇーばっひゅーんっ!!!!」
「ごめんヒロト…」
「ヒロトキーックっ!!ドッカーンッ!!ほら、さぁちゃん2号ダメージ受けたから倒れなきゃだめでしょっ!!」
「ヒロト、悪いんだけど…」
「んん??何??」
「あのね、あたしこれから出掛けるからさっ、メイク直して着替えるからさっ、出てってくんなぃ??」
「えぇー、やだやだやだぁーっ!!さぁちゃんと遊ぶのーっ!!」
「だぁめっ、ほら、待ち合わせ遅れちゃうからっ…」
沙我がそぅ言ってヒロトの背中を押してドアの向こうへ押しやる。
「さぁちゃんデートなのぉ??」
ヒロトが突然の上目遣い。
「ちっ…違っ!!」
「あー、さぁちゃん赤くなってるぅー。デートなんだぁー、デートデートぉーっ♪さぁーちゃんデートぉー♪」
ヒロトがキャッキャと熟れしそぉに歌い出し、沙我は更に赤面だ。
「うるさぁーいっ!!ほら、遊ぶんなら兄貴がいくらでも相手してくれるだろっ!!もぉ行けってばっ!!」
「ぷぅーっ…さぁちゃんと遊びたかったのにぃーっ…」
「ほら、この猫型ロボット返すからっ…」
「猫型ロボットじゃなぁーいっ!!じんぞぉにんげんっ!!!!」
ヒロトの抗議は虚しく、沙我の部屋のドアに拒まれて廊下に響いた。