V小説。
□不器用な愛。
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「ねぇ、沙我くんさぁ、このツアーだけで何回将くんにキスした??」
「ん??えっと…覚えてねぇよそんなの」
「数えきれないくらぃなの??」
「んなっ…口にはそんなしてねぇって」
「口じゃなきゃいぃってもんでもなぃでしょ??」
「そんな怖い顔すんなよっ…」
こうなることは分かってた。
無意識だなんて言い訳しても、そんな嘘、すぐ見破られるって分かってる。
分かってるからこそ、やってるんだけど。
「俺…そろそろ我慢できねぇよっ…ねぇ、なんでそんな意地悪するの??」
ヒロトは今にも泣きそうな顔して俺に言う。
俺だって別に、コイツを傷付けたくてしてるわけじゃなぃ。
確かにライヴ中、将にばっか度を越えた絡みを仕掛けてるのは認める。
ヒロトが将の恋人だってことももちろん知ってる。
こんな遠回りなやり方でしか、行き場のなぃ想いを吐き出せない自分の愚かさにも気付いてる。
間違ってるってことは、痛いくらぃ分かってる。
「ねぇ、沙我くんは将くんのことが好きなの??そぉなんでしょ??だから将くんにばっかあんなキスしたりするんでしょ??」
「ちげぇよっ」
そんな単純な問題だったらどんなに楽だろうと思う。
でも、それは違う。
俺が好きなのは、将じゃなぃ。
「じゃあなんで??俺、もぉ見たくねぇよっ…沙我くんにキスされて感じてる将くんの顔なんか…もぉ…」
「オマエのことが好きだから」
「へ??」
「俺が好きなのは、将じゃなくて、ヒロトだっつってんの」
「……えっ…どゆ…こと??」
「好きな奴が好きな相手に、近付いて妬かせて振り向かせたかったとか言ったら、どぉ思う??」
「…えっと…ごめっ、よく分かんな…」
「でも現にヒロトはこぉやって、俺のこと呼び出してくれたじゃん??2人っきりになれたじゃん??」
そう、アイツもコイツくらぃ素直だったらいぃのに。
もっと直接的に、俺にこうして怒りをぶつけてくればいぃのに。
挑発されてることに気付かないほど、バカじゃなぃハズなのに…
「ひどぃだろそんなの…やり方汚ねぇよっ…間違ってるよっ…」
ヒロトは、俺の突然の告白に、目を白黒させながら、言葉を選ぶよぉにそう言った。
「汚いかぁ…やっぱそぅ思う??」
コクンと、戸惑い気味に頷く可愛ぃ奴。
ちゅ。
「んっ!!」
俺は、ヒロトのポテッとした柔らかい唇に、軽く触れるだけのキスをしてやった。
ヒロトは目を見開いて何か言いたげな顔してる。
「んな露骨に困った顔すんなよっ。心配しなくても、ポンには何もしねぇよ」
「…へ??」
コイツを犯してやりたぃなんて、もちろん一度も思ったことなんてなぃ。
将との関係を壊すつもりもさらさらない。
当たり前だ。
俺が狂いそぉなくらぃ愛してやまなぃのは、ヒロトではなく、
もちろん将でもなく、
将のことが好きなんだと俺に打ち明けた、
俺と同じ下手で、
俺の隣でギター弾いてる、
長身でガタイ良くて、
男くさぃくせに猫顔で、
甘ったるい声を出すアイツなんだから。
ハナっから、ヒロトと将の関係になんて興味はなぃ。
「貴重な意見ありがと。参考になった」
「え…ちょっ…沙我くっ…」
もし俺が、アイツに想いを打ち明けたら、
アイツも、俺のやり方を汚いと思うんだろぅか…
卑劣な奴だと、罵るだろぅか…
もし、こんな風に突然キスとかしたら、
アイツはどんな顔するんだろぅ…
嫌われることは死ぬほど怖いくせに、
ホントは、愛されたくて堪らないくせに、
それが無理だと分かっているから、
せめて振り向かせたくて、
好きになってもらえなくてもいぃから、
俺の存在を、アイツの中に刻みこませてやりたくて、
わざと嫌われるようなことばっかしてる俺は、
なんて愚かなんだろぅ。
「将と、うまくやれよ」
訳が分からないという表情で固まってるヒロトに、にっこりと笑顔を投げかけて、
俺はその足で、衝動的に虎の元へ向かっていた。
続く。