V小説。
□切ない運命(サダメ)
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なんでなんだろ…
こんなに愛してるのに。
こんなに大好きなのに。
なんで俺は、アイツの傍に居られないんだろぅ…
居ちゃいけなぃんだろぅ…
アイツの1番輝いてる姿を、
もっと近くで見ていたいのに。
ずっと眺めていたいのに…
ねぇ、なんでなの??
ねぇ…
「なんでなんだよっ!!」
「はぃ??!!」
「だぁから、なんで俺と咲人はいっつもいっつも離れ離れなの??」
ライヴ後の楽屋。
テンション上がりきって興奮状態の柩に絡まれてる俺。
「…えっと、俺には十分すぎるほど一緒に居るよぉに見えますが??」
「違うっ!!!!ライヴ中の話っ!!」
ちなみに、黄泉と瑠樺さんはいつものよぉに、ライヴが終わるやいなや、別室へ。
おそらく今まさにお楽しみの最中。
咲人もたった今フラッと楽屋を出て行っちゃったとこ。
「ライヴ中??」
「そ、ライヴ中っ!!」
「…だってそりゃまぁ、オマエらどっちもギタっ…」
「だぃたぃさっ、ムカつくんだょ新弥のくせにっ!!」
「…は??」
柩は俺の言葉なんて、ハナから聞く気なぃって態度。
「だって狡いじゃんっ!!いつもいつも、新弥ばっかり咲人の傍に居れてさ、咲人のこと見てられてさ、なんで俺じゃダメなの??なんで俺は咲人の隣に居れなぃの??」
可愛ぃ顔して可愛ぃ声で可愛ぃセリフだけど、言ってることがめちゃくちゃなんですが、柩さん…。
「いやぁ…んな、だって、ポジション的にさぁ、ツインギターがくっついてたらマズイだろ…」
「新弥は良くて、俺はダメなんだ??」
「まぁ、俺ベースだし…」
「俺の方が新弥より何百倍も咲人のこと愛してるのに??」
「ぃや、愛とかの問題じゃなく…」
柩はうっすらと目に涙を浮かべてる。
まぁ、気持ちは分からなくはなぃにしろ、そんなことで俺が恨まれるってのも理不尽極まりなぃ。
「絶対おかしぃよっ!!ライヴで咲人が飛んだり跳ねたり歌ったり叫んだりしてんの、新弥ばっか眺めてられて、俺は遠くで独りぼっちって、そんなの…そんなの不公平じゃんかぁっ!!!!」
柩はそぅ言いながら、遂に本格的に泣き出してしまった。
「ちょ、泣くなって…柩??」
「新弥のバカーッ!!!!」
ぃやぃやぃやぃや…
俺なんにもしてなぃからっ…
「ひつ??」
その時、ガチャリとドアが開く音がして、咲人が顔を覗かせた。
「さっ…きと…」
「新弥、うちの猫泣かせたの??」
咲人は、ありえなぃくらぃ冷たい視線を俺に向ける。
もしかしなくても、完全に疑われてる。
「ばっ…!!ちげぇよっ!!コイツが勝手に…」
「ふぅん…勝手に泣き出したんだと。今確かに新弥のバカーッて聞こえたのは俺の聞き間違いだと、そゆこと??」
「…ぃや……」
なんつかもぉ、そんな目で見られたら、反論もできなぃ。
「ひつ??どしたの??」
俺に向けたのとは180度違う甘い声色で、咲人が柩に問いかける。
「…別にっ、何でもなぃっ」
柩は衣装の袖でゴシゴシと涙を拭った。
「あぁあぁ、メイクしたまんまでそんなことしたらダメでしょぉ。ほら、こっちおぃで。キレイにしたげる」
「ぅん…」
咲人に手を引かれて、柩は鏡の前のイスにちょこんと座った。
「今日さ、ライヴ中俺のことめっちゃ気にしてたでしょ??」
柩のメイクを落としてやりながら、咲人が優しく聞く。
「…そんなことなぃもんっ!!」
「嘘だぁ。こっちばっか見てたじゃん。ステージ広かったからねぇ。俺が遠くて寂しかったんでしょ??」
「っ!!……ちげぇよバカッ…」
「違うんだ??俺は寂しかったけどなぁ…ひつは寂しくなかったの??」
「…さびしっ…かったっ…」
で、結局は、いつもの苛つく光景。
壁の向こうからは、黄泉の喘ぎ声がしっかりここまで響いてる。
俺が廊下に追い出されるのも、きっと時間の問題だ。
end.