V小説。
□ありす一家。
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「たっだぃまぁーっ!!」
有須家の玄関に、末っ子ヒロトの元気な声が響く。
続いて、ドタドタと廊下を走る足音。
「ただいまただいまぁーっ!!」
ヒロトは今年、小学4年生の有須家次男にして3人兄弟の末っ子だ。
「あらっ、お帰りヒロト。今日はどこで遊んでたの??」
母親、Naoが可愛らしぃフリルのエプロンで手をふきふき、リビングから顔を出した。
「あのねぇ、今日はぁ、ゆーやくんちでぇ、宇宙人ごっこしてぇ、そんで外でね、スーパーサイヤジンサッカーしたっ!!」
「そぅ。良かったねぇ」
Naoはあえて「宇宙人ごっこ」と「スーパーサイヤジンサッカー」については触れずに、ただ優しい微笑を称えてヒロトの背中からランドセルを下ろしてやる。
「あっ、それとねっ、おかぁさん見て見てこれぇーっ!!」
そぅ言いながらヒロトが嬉しそぅに取り出したのは、どうやら厚紙で作ったらしぃ、ロボットのようなもの。
しかも2体。
「図工の時間に作ったの??」
今日は図工がある日だったことを思い出したNaoが、ヒロトに尋ねる。
「うんっ!!あんなっ、こっちの強いのがヒロト1号で、こっちの強いのがヒロト2号っ!!」
ヒロトは、どんなもんだとばかりに胸を張って自慢気に1号と2号を母に差し出す。
「上手にできたねぇ。でも両方"強いの"じゃ、お母さんどっちがどっちか分かんなくなっちゃうなっ…」
「だってどっちも強いんだもんっ!!空も飛べるんだぜっ!!」
決して"上手にできた"とは言いがたい1号と2号を手に、ヒロトはニコニコとご機嫌だ。
「はぃっ!!お母さんは2号ねっ!!俺1号っ!!いくよっ!!ドピューン、ガガガガ…トリャーっ!!!!」
よく分からない効果音と共に、ヒロトが1号を動かし始めた。
「ほら、お母さんも攻撃しなぃとやられちゃうよっ!!ドドッ、エイッ、ガシンガシン、ギュイーン、ハッ!!」
「ヒロト??」
「んにゃ??」
「ごめんねぇ、お母さん今、ごはん作ってるとこだから、遊ぶのはまた後で」
「えー遊ぼぉよぉ…」
ヒロトはぷぅーっと頬を膨らませて駄々をこねた。
「いぃ子だから。今日はヒロトの大好きなハンバーグだょっ」
「ハンバーグ??わぁーいっ!!」
「遊びたいならお姉ちゃんに遊んでもらいなさぃね」
Naoがそう言って2号をヒロトに返すと、ヒロトはそれを持ってすぐさま高校1年生の姉、沙我の元へ向かった。