V小説。

□新弥くんの恋人(第2話)
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「で、俺が那月くん役やればいいの??」

「だってまさか、俺が立候補するわけにもいかねぇじゃん」

「えぇーでもネコ経験がないって意味では瑠樺さんの方がいいんじゃない??」

「バカ!!体格の問題とかあるだろが!!」

「そりゃそうだけど…」

あぁ、瑠樺さんに相談したのがそもそもの間違いだったなと、俺は後悔した。

柩にしとけば良かった…

俺が那月と付き合い出して、3ヶ月と少し。

俺も那月もなかなか忙しく、まだ両手に収まるくらいしか、デートらしいデートもできていない。

そのうち体を重ねたのは、片手に収まる回数だ。

「なんだよ、まだそれしかヤッてねぇのかよ」と、瑠樺さんにはからかわれたけど、

正直、問題なのは回数じゃない。

その内容だ。

初めて那月に会った夜、俺は一目惚れし、そして奇跡的な再会を果たし、自宅へ連れ込んで酒を飲ませた。

そして那月を抱いた。

………と、言いたい所だが、

実際には俺は、アイツに抱かれた。

ルックスも、趣味趣向も、声も、誰だって女の子と間違えるような可愛い奴に、体を組み敷かれ、力ずくでブチ込まれるなんて、どう考えても納得がいかなかったから、

当たり前だが、俺は那月に「俺が下になるのはこれっきりだぞ」という意味のことを告げた。

しかし、那月の答えは「努力はするけど約束はできない」だった。

それからというもの、俺の部屋でも、ホテルでも、確かにアイツは、「努力」をしているようだった。

でも結局俺は、いつもいい所で那月にひっくり返された。

細い体をしているくせに、何故か力は並みの男以上なのが不思議でたまらない。

スイッチが入ってしまった那月は、どうにも止めらず、

獣の目をして、微笑みさえ浮かべながら、俺が痛がるのにも耳を貸さずに腰を打ち付けてくる。

それでいて、事が終わると決まって「ごめんなさぃ…」と泣きそうな顔で謝ってくる。

そんなこんなで、結局俺はまだ1度も那月を抱いたことがなかった。

誰かに助言を求めたかったが、男同士のことについて熟知している友人なんてのは、そうそう居るはずもなく、

たまたま瑠樺さんに「最近例のロリータ少年とどぉなのよ??」と聞かれたもんだから、

思いきって相談をしてみたわけだが…

「じゃあ新弥、俺のこと那月くんだと思って…」

そう言いながら、黄泉が俺にわざとらしい視線を投げかけながら、シャツのボタンを1つずつ外し始めた。

「那月はそんなことしねぇよ!!」

俺は、瑠樺さんの冷静な助言が欲しかっただけなのだが、

なぜコイツが現れる??

「新弥さんっ…俺もぅ…我慢できない…抱いてっ…俺をめちゃくちゃにしてっ…!!」

黄泉は、明らかに楽しんでいると分かる口調でそんなことを口走りながら、俺に抱き付いてきた。

「おぃ!!離れろバカ!!」

「新弥さんヒドイ!!俺のこと、嫌いなの??」

「だいたい、瑠樺さんはいいのかよ、こんな…ゾジーを他の男に…」

俺は、黄泉が那月になりきっているのを無視して瑠樺さんに尋ねた。

「他の男っつーか、新弥じゃん??知らない奴なら嫌だけど…」

「あぁそぅですか、俺は嫉妬の対象にもならなぃと…」

「そうゆう意味じゃねぇよ!!新弥のためを思ったら、実践指導が1番てっとり早いだろが!!」

「実践ね…でもさ…」

「わぁーってるよ、オマエの言いたいことくらい。実践ったって、ゾジ相手に勃たねぇってことだろ??」

「まぁ、それもあるけども…」

「ゾジ、例のブツっ」

「イエッサァー!!」

もはや楽しんでるとしか思えない2人のそんなふざけたやりとりがあり、

黄泉が、自分の鞄から、一冊の大きな本を取り出した。

その表紙を見て、目を見開く。

「あぁーっ!!西蓮アヤミの写真集!!」

俺は急激に体温が上がるのを感じた。

それは、俺が昔から好きなAV女優の新作写真集だった。

「ちょっ、オマエもう買ったのかよ!!貸せ!!」

「やだよ。俺だって今日手に入れたばっかだもん。でも新弥のために仕方なく貸してあげるんだからね!!実験が終わったら返してもらうからね!!」

「それ言うなら実践だっつの。実験してどうすんだよっ」

「あ、そっか。アハハハ!!」

「…はぁ??」

俺は、よく意味が理解できないまま、嫌な予感だけ、膨らんでいく。

「まぁつまり、新弥はそのお姉さん眺めて勃たせろってことだな。たまたまゾジがちょうどいいもん持ってて良かったよ」

「じゃあ瑠樺さんは、写真集めくる係りねっ!!」

「おぅ、任せとけっ」

「新弥っ!!さぁおいでっ!!」

「いや、おいでとか言われても…」

「那月のこと抱きてぇんだろっ!!男になりてぇんだろっ!!」

「あぁ、まぁ、そりゃ…」

「別にゾジのことを那月だと思えとは言わねぇから、とりあえずいつもの手順でやってみろ。で、萎えたらコレを見ろっ」

瑠樺さんの言葉に、俺は思わず写真集に目をやってしまう。

そこには、大きく足を開いて、恍惚とした表情をしたアヤミちゃん…

ヤバィ、あんなん見たら、マジで勃っちまう…

と、しばらく写真集の中のアヤミちゃんから目が離せなくなっていた時だ。

「新弥さんっ…」

「んっ!!んんっ!!」

突然、黄泉が視界に飛び込んで来て、いきなり唇を塞がれた。

チョコレートでも食ったのか、甘ったるい味がする。

「んんっ!!んっ!!」

俺は必死に抵抗したが、黄泉は両腕を、しっかりと俺の背中に回していて、なかなか離れない。

「んっ…」

「おぃゾジ!!」

「んっ…へ??」

瑠樺さんの一喝で、黄泉はやっと俺から離れた。

「何してんだよっ!!」

「え、実験っ」

「新弥の実践なんだから、オマエからキスとかする必要なくない??」

「だって、新弥がウジウジしてたら、那月くんきっと自分からするよ、キスくらいっ」

「そりゃ、そうかもしんねぇけど…」

「ねぇ新弥さん…シよ??」

黄泉は、上目遣いで俺を見上げて、イヤらしい手付きで俺の股間を撫でてきた。

俺は、慌ててアヤミちゃんへと視線を移す。

瑠樺さんは、自分で提案したことのくせに、黄泉の方から俺を誘惑するのはおもしろくないらしく、不機嫌な表情だ。

こうなったら、もうやるしかない。

これ以上、瑠樺さんを怒らせたら危険な気がする。
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