V小説。
□新弥くんの恋人(第1話)
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アイツが姿を見せるはずの時間が、
刻一刻と近付いている。
そろそろ切り出さなければ…
もうすぐ、アイツが来てしまう。
新「あ、あのさ…」
黄「瑠樺さんやだぁwwそんなとこ触ったらダメ!!」
瑠「なんで??いぃじゃんっ」
咲「ちょっと、向こうのリーマンたちに、めっちゃ睨まれてない??」
瑠「おもしれぇじゃん」
柩「いやいや!!おもしろくなぃでしょ!!」
咲「んー、おもしろいかもしんなぃねぇ…笑」
柩「わっ!!ちょっ!!咲人!!どこ触って…///」
今、俺らは、5人でツアーの打ち上げ中。
メンバーだけで打ち上げするのとか、かなり珍しいんだけど、
まぁ、楽屋でも、現場でも、車内でも、
「5人だけ」になった時に、俺の目の前で繰り広げられる光景というのは、いつもこんな感じなわけで、
今日はこの何とも居心地の悪い空間で、惨めな思いをしている自分から卒業することが、ツアーの打ち上げよりも大事な、俺の目的だったりする。
そのためには、アイツが来る前に、とりあえず俺からコイツらに話しておかなければならない。
どんなに会話に入りにくい状況だろうが、今しかない。
新「なぁ…」
瑠「ぞじ、今日俺んちがいぃ??たまにはホテル行く??」
黄「瑠樺さんちがいぃ!!」
瑠「了解っ」
新「なぁってば!!」
瑠・黄「……」
柩「新弥、誰に話しかけてんの??」
新「全員だよ!!」
咲「は??」
新「だからオマエら4人だよ!!」
瑠「はぁ…何??」
新「ちょっと、俺から、話あんだけど、いい??」
黄「えぇー何々??」
咲「どーでもいいけど、そんな眉間にシワ寄せて話すようなことなの??」
柩「え??真剣な話??」
黄「新弥脱退??」
咲「辞めんの??」
瑠「そっかぁ…残念だけど元気にやれよっ」
新「ちげぇよ!!辞めねぇよ!!」
黄「じゃあ何なの??」
新「ぃや、あの、あのさぁ、もうすぐここに、人が来る…」
柩「はぃ??」
新「だから、なんつーか、会わせたい奴が、いるっつーか…」
黄・瑠・咲・柩「………!!」
新「いや、俺が会わせたいわけじゃなくて、向こうが会いたがったから呼んでやったっつーか…」
瑠「………嘘だろ??」
咲「うわぁ…」
黄「えっ、えっ…(戸惑い)」
柩「あの、一応確認だけど、その、その人ってのはつまり、新弥の…か、かか、彼女さんという風に解釈しちゃって、いい感じなんでしょうか??」
新「まぁ、そぉゆことになんだろぅなっ」
瑠「うっわ、マジかよ!!」
咲「あらあら…」
黄「うそぉーっ!!新弥…えぇーっ!!」
4人は、それぞれにかなり驚いているような様子を見せた。
まぁ、それも当然だろう。
なんせ俺はここ最近、めっきり女っ気がなかったし、ましてや特定の人と付き合うなんてのは、何年ぶりか分からない。
昔はそれなりに彼女とかもいたりしたけど、メンバーから「会いたい、会わせろ、連れて来い」とねだられることはあっても、自分から紹介するなんてパターンは初めてだ。
柩「え…いつから??知らなかったの俺だけ??」
瑠「いやいや!!初耳だっつの!!」
咲「新弥もついにねぇ…フフッ…そっかぁ、新弥がねぇ…フフフ」
黄「ねぇねぇ可愛い??何系??おっぱいデカイ??」
瑠「んなの、今から来んだったら自分で見たらいぃだろっ」
黄「あ、そっか」
柩「絶対、年上のお姉さんでしょ!?」
咲「面倒見のいぃ、キャリアウーマン系??」
瑠「女王様系じゃね??」
新「あ、来たっ」
黄・瑠・咲・柩「………っ!!」
コイツらが好き勝手言ってる間に、店員に案内されてキョロキョロしながら奴はやって来た。
4人の視線が、一点に集まる。
全員が、口を開けて、愕然としている。
新「ナヅキ!!こっち!!」
黄・瑠・咲・柩「(な、なづきっ!!)」
新「迷わず来れたか??」
そう聞くと、俺の恋人はコクンと頷き、笑顔を見せた。
コイツなりに、精一杯おしゃれして来たんだろう。
今日は、ピンクの清楚系ワンピースに、レースがたくさんついた帽子、背中には、ウサギのぬいぐるみでできたリュックサック。
頑張って伸ばしている途中らしい髪は、キレイに2つに束ねてある。
やっぱり、いつ見ても可愛い…
瑠「予想は大ハズレってわけだなっ…」
咲「どうやら、そうゆうことらしいね…」
黄「うわうわうわぁ…」
柩「…でも可愛い」
新「ホラ!!何緊張してんだよ!!あいさつは??」
那「あ、えっと、はじめまして。那月っていいます。えっと、えっと、大ファンですっ!!!!」
黄・瑠・咲・柩「………」
瑠「ちょっ待て。男じゃねぇ??」
柩「瑠樺さん声デカイって!!…俺もそんな気がしたけどっ」
咲「いや、確実。女の子の声じゃない」
黄「え??何々??あの子男なの??」
瑠「ばっ!!あからさまなんだよオマエは…」
柩「いやいや、瑠樺さん人のこと言えないっ」
4人はコソコソしているつもりらしいが、しっかり聞こえてる。
那月も、そこがバレるのは想定内だったらしく、そんなことよりも、今自分の目の前にいる「本物のナイトメア」に夢中な様子だ。
那「なんかもう、感動です!!瑠樺さんも咲人さんも柩さんも黄泉さんも大好きです!!俺、ナイトメアに憧れてバンド始めたんです!!あ、でももちろん、にゃん様が1番大好きなんですけど…」
黄・瑠・咲・柩「にゃん様ぁ!?」
瑠「おぃ、にゃん様ってどこのどいつのことだ??」
柩「俺に聞かないでよっ…」
咲「まぁ、おそらく新弥のことなんだろぅけどね…」
黄「プッ…」
4人は、相変わらず俺らに丸聞こえの声でコソコソ話してる。
新「だからその呼び方辞めろっつっただろが、バカ!!」
那「あ、ごめんなさぃ…」
黄「ちなみに、なんでにゃん様なの??」
那「えっ、あの、ニイヤって縮めるとニャーってなるので、俺、ネコ大好きなんで、可愛いなって思って、だから、えっと、そこに尊敬の気持ちも込めて、ずっとそう呼んでたんです…。でも新弥さん、嫌みたいで…」
瑠「そりゃそうだろっ」
黄「でも、こんなカッコなのに普通に俺って言うんだね…」
柩「てかさ、俺らに憧れてロリータに走る意味が分からないんだけど…」
咲「俺は新弥がそっちに走った意味の方が分からない…」
瑠「まぁ、ご本人にゆっくり語ってもらおぅじゃん、ナレソメをさっ」
新「はぁ??んなっ…」
那「きゃあwwナレソメだなんて恥ずかしぃです…」
咲「はたしてホントに恥ずかしいのはどっちかねぇ…」
黄「新弥の恥ずかしい話、聞きたい聞きたぁい!!」
柩「俺も!!超興味ある!!」
そんなこんなで、メンバーにせがまれて、
仕方なく俺は、コイツとの出会いから、こと細かく教えてやる羽目になった。
初めてコイツに会ったのは、忘れもしない、このツアーが始まったばかりの、横浜でのライブが終わった夜のことだ。