novel

□アンラッキーデー
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「そんでルルーシュ先輩がさ」


やめろ。


「ルルーシュ先輩て笑うと綺麗だよな」


俺の前でその名前を出すな。


「今度ルルーシュ先輩が料理作ってくれるって。だからスザクも」


黙れっ。


がたんっ、と椅子の倒れる音が部屋に響いた。隣に座っていたジノは、これまで静かに話を聞いていたはずの同僚を驚いた表情で見上げた。


「スザク?」


眉をひそめて名を呼んだ。しかしそのスザクは何か思い詰めた顔で前を見つめている。さすがのジノもあれ?と思った。

気に障るようなことを言ってしまったのだろうか。

ジノとしては学校に行っていないスザクのために、スザクと仲が良かったらしい生徒会の話題を持ち出すことで、もしかして少しは学校に行こうと思ってくれるかもしれないなんて下心を含みつつ、話をしていたのだが、どうやら逆効果だったらしい。
スザクは唇をきつく噛みしめ、拳を握っている。その上ふるふると体を震わしている。

一体どうしたというんだ。いくらなんでもこの様子はおかしすぎる。

そう思ってジノが話しかけようとしたときに、スザクがきっと此方を睨んできた。


「ジノ」

「はいっ?」


スザクのただならぬ雰囲気に思わず背筋を伸ばし敬語で返してしまった。


「俺は学校に行く」

「え!?」


今のスザクの発言にはいろいろ突っ込む箇所があったが、当のスザクは言うや否やくるっと向きを変えスタスタと部屋から出て行ってしまった。



そして次の日。宣言通り制服に着替えたスザクが、ジノとアーニャと共に校門をくぐったのだった。


*******


ルルーシュは立ち尽くしていた。ある光景から視線をそらすことができなかった


スザク!?なぜスザク!?
あいつは、今、休学という話じゃなかったのか。

その光景とはスザク、ジノ、そしてアーニャが仲良く並んで校舎に歩いてきているものだった。なぜラウンズがこんな学校に3人もいるんだ。いや、もうこの際2人はどうでもいい。どうやら自分をゼロと疑っているわけではないらしいから放置しておくことにしておいた。アーニャの画像の件は適当に否定していればなんとかなりそうではある。だからさわらぬ神になんとやらだ。

しかし問題なのはスザクだ。

先日の歓迎会のことだ。ロロ達がうまくやっていることもあって、現在もゼロだった記憶は戻っていないことになっている。当然、スザクもそう報告を受けていたはずだ。それなのに、あろうことかナナリーを利用して…!その時点でスザクに対するルルーシュの憎悪は跳ね上がっていたが、さらに追い討ちをかけるような出来事が起こったのだ。

なにが、なにが「俺とこんなことしたのも忘れちゃった?」だ!

思い出すのも忌々しい。ナナリーのことで既にルルーシュの頭はいっぱいいっぱいだったのに、その後無表情のスザクが無言で近づいてくるもんだから、怖くて後ずさりをしていると、あっという間に手すりまで追いつめられた挙げ句に唇を奪われたのだ。

万一、俺の記憶が戻っていなかったらただの変態だぞ。

とその時はつっこめもせず必死にもがいたが、ただでさえ体力バカだったのがラウンズになって無駄にパワーアップを遂げたスザクに効くわけもなく、そのままされるがままに濃厚なキスを受け入れる形になっていた。そのまま体を触ってきたからどうなることかと最悪の場合を危惧したが、その時はさすがに最後まではしてこなかった。しかし自分から離れていったスザクにほっとしたのも束の間、ルルーシュが演技を交えつつ、そっと顔を上げたその先に「今度は最後までヤるからね」と言いたげなスザクの顔があった。無表情だったが、だてに親友兼恋人をしていただけあって、ルルーシュにはその瞳にこめられた意味を読みとれてしまった。それにしてもルルーシュの記憶が戻っていなかったら本当にスザクはただの変態なのだが、ラウンズ様だから許されるとでも思っているのだろうか。

俺が庶民で、スザクがナイトオブラウンズか…。くそっスザクのくせに生意気な。

とにかくルルーシュにはスザクが通学してくるなど迷惑も甚だしい。今まで以上にロロ達には気を使ってもらわけなければならないし、それより何より自分の貞操が危ない。いや、貞操ならとうの昔にスザクに奪われているが状況が違う。咲世子ならスザクから逃れられるかもしれないが、それはそれで怪しまれる可能性が高くなるなんて情けなさ過ぎる。

一体どうしたものか。だいたいスザクはワンになりたいのならもっと仕事をしていろというのだ!


「おはよう」

「ん?」


突然、ぽんと肩を叩かれた。


「ルルーシュ先輩、おはようございまーす」

「おはよう。ルルーシュ君」

「!!」


ルルーシュが募りに募ったスザクへの不満を心の中でぶちまけている間に3人が目の前まで来ていたのだ。肩を叩いたのはスザクだった。その微笑みがまた怖い。だがルルーシュはそんなことは微塵も感じさせない笑みを浮かべた。


「おはよう」

「どうしたの?眉間にシワが寄ってたよ」


どうしたの?は、自分の台詞だ。というかこの前のことはなかったかのように話しかけられたが、そして思わずルルーシュも普通に挨拶をしてしまったが、まさか本気で自分を襲いにでも来たのだろうか。

いやいや、スザクもそんなに暇じゃないだろう。なんたってラウンズ様だからな!

ルルーシュは不吉な予感を振り払うかのように、努めて明るく否定をしてみた。が、気分は落ち込むばかりだ。


「それはスザクだろ。お前、休学届け出したって聞いたぞ」


だからブリタニアにでも行ってろよ、と言いたい。だが言えない。どう考えても自分が不利な状況に、ルルーシュはこっそり舌打ちをする。
そんなルルーシュの心境を知ってかなんなのか、スザクは先程から上機嫌にルルーシュを見ていた。


「うん、そうんなだけどね。やっぱり学校には通おうと思ってさ。だからまたよろしくね」


にこにこと答えるスザクに、ルルーシュは微笑み返すしかなかった。




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