novel

□君の居場所
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スザクがいない。公務でどこかに行っているらしい。携帯も繋がらないし、いっそ押し掛けるか?だめだスザクに冷めた目で睨まれる上に機嫌を損ねてしまったら元も子もない。でも今日中に絶対に会いたかった。

だって今日はスザクの誕生日だ!

スザクの誕生日を祝うのは初めてだ。だから本当なら一緒にケーキ食べたり、いちゃつきたいけどスザクの仕事の邪魔はできない。出身であるエリア11、日本で頑張ってるからな、アイツ。
ということで、朝から暇だった俺はスザクの自室に居座って部屋の主人を待っていた。だが昼を過ぎても、夕方になっても帰ってくる気配はない。一応軍にはスザクが戻ってきたら連絡をさせるように指示をしてある。だからもし此処に来なくても分かるはずだ。

が、夜になってもまだ来ない。何かトラブルでも発生したんだろうか。やばい。時計はもうすぐ12時をむかえそうだ。

「こんなことなら押しかければ良かったぜ!」

ばふっとスザクのベッド目掛けてダイブした。枕のスザクの匂いが恋しいなんて言ったら、またスザクに呆れられるんだろうな。あーでも恋しいものは、恋しい!

「十分押しかけてると思うんだけど」

「そんなことねえよ!俺は耐えて、…ん?」

スザクの声がどこからともなく聞こえてきた。まさか、と思って勢いよく顔を上げるとラウンズの制服のままのスザクが見下ろしていた。

「人の枕を抱きしめて何をやってるんだ?」

「スザク!」

待ち焦がれた人物に、俺はベッドを飛び降りた。スザクに明らかに不審な目を向けられているが、そんなことより時間は大丈夫かっ?

「よし、まだ間に合う!」

「何がだ?」

首を傾げているスザクに向き直る。こうなんか改めて言おうとすると、少し照れくさい。

「誕生日おめでとう、スザク」

「え…」

「今日言えないんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたぜ」

やっぱり当日に伝えたいもんな。
……にしてもスザクの反応が薄い。というか口をぽかんと開けたまま動かない。あれ?誕生日間違えた?それはない。あんなにスザクのプロフィールを見返したんだ。

「す、スザク?」

しかしあまりに固まっているので不安になってきた。呼びかけて、顔をのぞき込もうとしたら、スザクはくるっと背を向けてしまった。

「ちょ、あれ、泣いてる?」

一瞬だけ見えた瞳は潤んでいた。

「うるさい!泣いてない」

そう言いながら袖で顔を拭ってるんだけど。え、泣かせた?なんで、俺に祝られたくなかったとかないよな。
まさかの涙に俺の思考も混乱し始めた。だってスザク、普段あんまり感情出さないのに泣いたなんて俺は一体何をしでかしたんだ!?

「えっと、とりあえず、ごめっ」

「違う!違うんだ」

何がなんだか分からないまま謝ろうとした俺に、スザクは背を向けたまま首を横に振った。

「?」

「う、嬉しかったんだ。帰ったらジノが居て、誕生日のこと言ってくれたのが。僕にはもうそんな人居ないと思ってたから…」

まだ泣いているのか、声が途切れ途切れだ。

「ありがとう、ジノ」

スザクがとても愛おしく思えて、後ろから抱きしめた。

「そんなのスザクが喜んでくれるなら何度でも言うよ。毎日でも」

「誕生日は年に一回だよ」

「じゃあ毎日部屋で迎える」

「それはちょっと嫌かな」

スザクが腕の中で体の向きを変えた。向き合うような体勢なると、ようやくスザクの顔が見れた。目が合うと照れくさそうに視線をそらされた。

「スザク、おかえり」

「…ただいま」

そう言った顔は、これまで見たことのないような笑みだった。




スザクが望むなら、俺はいつまでもスザクの居場所になってやるよ。






「スザクってもしかして涙もろい?」
「うっうるさいな。別に泣いてないからな」


fin

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