novel
□一方通行の恋
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ルルーシュがそっけない。
そりゃ記憶を書き換えられたから仕方がないといえばそうだし、自業自得なんだけど、だからってリヴァルと扱いが同等になっているなんてあんまりじゃないか。思わず教室で泣いて訴えようかと思った。
「はあ」
「どうかしたのか?」
ジノが俺の肩を抱きながら隣に座った。向かいのソファも空いているのに、わざわざこっちに来なくてもいいじゃないか。というかルルーシュよりジノからのスキンシップの方が多いってどうなんだよ。しかも僕の方が体が小さいからすっぽり片腕に収まってる状態になっているところが余計に腹が立つ。
それにひきかえルルーシュとはようやく背丈が同じくらいになったし、細いから、今抱きしめたらどんなに心地いいだろう。
「スザクはちっさくて可愛いな〜」
「…ジノ。どこか行ってくれないか」
「強気なとこも俺好みだし」
強気で僕好みなのはルルーシュだ!
言ってやりたい気持ちをぐっとこらえた。だってなんか似ている。ジノと僕の好みのタイプ。や、ルルーシュは小さくないけど。
「髪の毛触っていい?」
ルルーシュの髪、また撫でたいな。
「ってジノ。返事をしていないのに触らないでくれないか」
「無言は了解だろ」
「違う。拒否だ」
そう言ってジノから離れようとしたが、肩を組まれているのでそれは無駄に終わった。結果、髪は触れたままだ。
そういえばルルーシュは、僕が「キスしていい?」って聞くとほんのり頬が赤くなって視線そらしたっけ。はあ。あんなルルーシュはもう見れないのかな。僕が不用意に近づけば記憶が戻ってしまうかもしれない。同じ学校に通ってる時点でかなりの接近だけど、まあ、監視の内だ。せっかく殺したゼロを復活させるわけにはいかない。それとも、あのゼロは本当に君?だったら僕のこと気づいた上であの態度?
くそっ早く確かめないと。
「スザクなに1人でにやついてんだよ〜。俺とこうしてんの嬉しいのか」
頭から降ってきた声に、ジノがいたことを思い出した。いけない。ジノに触られるのに慣れ始めてる。
「そんなわけないだろ。ジノは早くどいてくれ」
「やだ。スザク抱き心地いいんだもん」
悪かったな小さくて。一年前もルルーシュ方が大きかったけど、これは確実にブリタニア人の遺伝的な問題だ。ついでに僕が童顔なんじゃない。ジノが老けすぎなんだ。…こうでも思ってないとやっていけない。
「だからって所構わずベタベタと」
「いーじゃん」
「変な噂がたったらどうしてくれる」
「あー…もう遅いんじゃないか」
「?とにかく暑苦しいからどいてくれ」
言っておきながら自分でどうにかできないのがもどかしい。だから結局いつもくっついているはめになっている。
「はあ」
「今日はため息が多いな」
「今のはジノのせいだ」
でもなんだかんだ言って、人のぬくもりはいいものだ。特に今の僕にはなかなか与えられないものだから。だからジノを本気で振り払えない。
少しだけ顔を上げてジノの顔を見ようとしたら、いつから僕を見ていたのか至近距離で目があってしまった。
「何?」
「またムッツリしてたから」
「むっつり?」
「スザク笑うといっそう幼く見えて可愛いからさ、俺は笑ってて欲しいわけ」
幼い…。さっきから人の気にしてるところをずけずけと。
「言っておくけど僕は日本人としては」
平均的だ!と主張しようと意気込んだが、次のジノの表情がいつもよりどこか暖かくて思わず口をつぐんだ。
「スザクは1人でがんばりすぎなんだよ」
「そんなことは」
「俺ら友達だろ」
「友達…」
「だからスキンシップは大切だぜ!」
は…?
え、なんか視界が動いたっていうか、いつの間にかジノに見下ろされてるんだけど。
「〜〜ジノっ!普通友達を押し倒したりはしない。どけっ」
「スザク。俺たちもっとお互いのこと知った方がいいと思うんだ」
「なんか顔が笑ってるぞっ」
バタバタと情けなく暴れてみるけど、全く効いていないのか、ジノはにやにや笑っている。一時でもジノの明るさに救われてるなんて思った僕がバカだった。
にしても、こんな状況になって初めてルルーシュの気持ちが分かったような気がするよ。力で負けてるってこんな感じだったんだね。
とりあえず今度ルルーシュを押し倒すときには優しくしようと心に誓った。
fin
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