リボーンの部屋

□ポッキーの日ですから
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今日は朝から土砂降りだった。

そのせいか生徒たちのテンションはいつもと比べてかなり低く。教室内はどんよりとした空気で覆われていた。

しかし。

そんな空気とは正反対に、酷く燃えている男が一人。


(よし。今年こそは、絶対に実現させて見せるのな!!)


彼は酷く燃えていた。間違った方向に。

彼が一年前の今日成し得なかった、ある野望を胸に秘めて。


(今年こそ。今年こそ獄寺とポッキーゲームを!)



ポッキーの日ですから 〜リベンジ〜





「なぁなぁ獄寺!ポッキーゲームしようぜ!」


昼休み。

雨のため屋上が使えなかったツナ達一行は、いつもと趣旨を変えて、教室で昼食をとっていた。

そんな時。彼、改め野球バカこと山本武が口を開いた。

山本の眼は、いつも以上に輝いていた。それはもう、夢に満ち溢れた目だった。


「は?」


声をかけられた獄寺こと獄寺隼人は、ポカンとした目できらきらと顔を輝かせている山本を見た。

こちらは、山本とは打って変わってかなり呆れた顔をしていた。


「何言い出してんだこの野球バカが。脳みそ湧いたか?」
「ちょ、獄寺くん。それは言い過ぎじゃあ……」


獄寺の言葉を、困ったように否定したのは、ツナこと沢田綱吉だ。

ちなみに、彼がずっと口を開かなかったのは、山本の突然の言葉に軽く引いていたからである。

しかし、そんな二人のことなどもろともしず。山本はさらに言葉を続ける。


「いや、だってさ。去年はできなかったじゃん。だから今年はやりたくてさ」


そう言いながら、とても楽しそうな笑顔で山本は鞄からポッキーを出した。

なんて用意がいいんだろうか。

呆れたようにツナは頭の中でつぶやいた。

そして、ふと疑問に思ったことを山本に聞いてみた。


「去年も、やろうとしたんだ……」
「おう!そういやあんときツナいなかったもんな。あと少しのところだったのにヒバリに邪魔されたんだぜ」
「へぇ」


その現場に居合わせなくてよかったなぁ。

なんてことを思い、今年は居合わせてしまったという事実にツナは思わずため息をつく。

その時だった。

さっきからツナの隣でわなわなとふるえていた獄寺が口を開いた。


「ふざけんじゃねぇ!誰がテメェなんかと!!」
「ツッコむとこそこ―――?!」


明らかに論点のずれた獄寺の叫びにツナは思わずツッコミを入れた。

この発言を聞いて。黙っていなかったのは山本だ。


「なんだよ。じゃあ獄寺はツナとだったらやるってのかよ!!」
「なんでそうなんのさ!」


また、明らかに論点のずれた発言で。ツナは思わずツッコミを入れた。

自分を巻き込んではしくないのが、ツナの強い願いだった。


「ああ。十代目がお望みとあらば何回でもやってやろうじゃねぇか!」
「何回でもってって獄寺……。そのうち半分は俺とやれよ!」
「嫌だね。お前とやるなんか、せいぜい十代目とやるだけの10分の1程度だ!」
「それは聞き捨てならねぇな」


ぎゃあぎゃあと二人揃ってツナを巻き込んで言い合いを始める獄寺と山本。

なんだかツナはむなしい気分になっていった。

なんでこんな訳のわからないことな巻き込まれなくてはならないのか。そんな気分でいっぱいだった。

ふと振り返ったツナの視線が、あわれむようにツナを見ていたクラスメイトの一人と合致する。


お前も、大変だな。


そんな思いが込められた目を見て、ツナはなんだか泣きたくなってきた。

前を見ると、相変わらず言い合いを続ける獄寺と山本の姿。

二人とも、ポッキーゲームのことなど完全に忘れているようだった。


(昼休み終了までには、終わるといいんだけれど)


そんな、軽くあきらめた思いでツナは食べ終えた弁当箱をかたずけるのだった。


*おわり*
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