リボーンの部屋

□ある日、
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「こんにちは、十代目!」


沢田家に、獄寺の大きな声が響いた。



今日は日曜日だ。

だから、獄寺は十代目であるツナの護衛のために、彼の住む沢田家を訪れていた。

これは、休日の獄寺の日課となっていて。

初めのうちは来なくていいといつも言っていたツナだが、なんどいってもきかない強情な獄寺の態度に、
次第に諦め今では何も言わなくなっていた。



獄寺の声を聞いたツナは、ああもうそんな時間かと思いながら立ちあがった。

獄寺の来る時間はだいたいいつも同じ時間だ。

彼は自分にとても忠実で。特に自分が関わると本当にきっちりとしていた。

そこまでされているツナは、正直言うとそこまで悪い気はしないのだが。やっぱり、いつも困ってしまう。

友達として付き合ってほしいんだけどなぁ。

そう胸の中で呟き、玄関で待っていると思われる獄寺を迎えに行った。




「こんにちは獄寺くん……」


玄関に到着し、獄寺に声をかけたツナは、ついついそこで固まってしまった。

ツナの目の前には、嬉しそうに獄寺の横に立つ山本の姿があった。

そして、その横でいつものような嫌そうな顔ではなく少しほころんだような顔をする獄寺の姿も。

何かあったんだろうか。



獄寺は、はっきりと言って山本の事を嫌っている。

それは、獄寺が勝手にツナの右腕のライバルとして山本を敵対視しているからだ。

別に、山本が何をしたと言う訳ではないのだが。とにかく嫌っていた。

それは、お互いに知り合って1年以上も経った今でも変わっていない。

なのに、今目の前には仲の悪いはずの二人が立っていた。

だから一緒にいたツナとしては、とにかく驚きの事なのだ。




「よう、ツナ!」
「え。あ、うん」


笑顔で挨拶をしてきた山本に、ぎこちない笑顔で返す。

ツナは、状況があまりよく理解できていなかった。

たしか、一昨日の金曜日の帰りには、相変わらず獄寺は山本に突っかかっていたというのに。

何があったんだろうか。

そう思いだすと、気になって仕方無くなってしまったツナは、ついつい口を開いてしまった。


「二人とも……。何かあったの?」
「「えっ?!」」


ツナの口から飛び出た言葉に、今度は獄寺と山本の方が驚きの表情を見せた。


(絶対何かあったな……)


顔を引きつらせる二人を見て、ツナの疑問は自然と確信へと変わった。

その時、慌てたように獄寺が口を開いた。


「いや、何にも無いですよ?別に、野球馬鹿となんて何もないんです!」
「うん、そーなのな」


頬を赤く染めながら焦ったように何もないと繰り返す獄寺と、同調する山本。

これじゃあ、何かあったと言っているようなものだ。


「そう。んじゃ上がってよ。チビ達がうるさいけど」


別にそんなにも深入りする気はないツナは、とりあえず玄関に立ちっぱなしでいた二人を招いた。

御邪魔しますと言った後、まだ否定をする獄寺をたしなめながら、そんな焦ることがあったのだろうかと逆に気になってきてしまった。

ツナは何となくちらりと山本の方を見た。

山本は相変わらずの笑顔だった。

しかし、いつもとは違い少し頬が赤かった気もしたのだが。自分の気のせいだろうか。

頭の端でそんな事を考えながら、ツナは二人と一緒に自分の部屋に続く階段を上った。


(まぁ、)


仲良くしてくれるならいいんだけど。



自分の友達の中が親密になったのは、ツナにとって正直に嬉しい事だった。

ついつい、自分まで顔がほころんだ。





この時のツナは、二人の赤い頬の本当の理由を。知るはずもなかった。


――――真実を知る、1か月前の出来事。



*終わり*
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