脱色
□ひまわり
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あの日は久しぶりの休みだった。
海燕殿に誘われて出掛けた丘。
驚いて断ろうとする私に、「ピクニックだと思えばいいんだよ」なんて笑っていたあの人。
一時間程歩き着いた丘の上からは、尸魂界が一望出来た。
初めて見るその景色に感動する私を見て、海燕殿はクスリと笑って酒を呷る。
そうして、不意に悪戯を思い付いた子供のように笑って問い掛けた。
「なぁ、朽木。知ってるか?」
「何を、ですか?」
問い返す私の頭を撫でて、海燕殿は静かに話始めた。
「都が言ってたんだが…人はな、誰でも心の中に、花の種を抱いて生きてんだと」
「花の種、ですか…」
一人ごちる私にあぁと呟き、そっと目を閉じた。
「夢見て咲くなら“菫”。密やかに咲くんだったら“野菊”。んで、人を傷付けんのが“赤い薔薇”で、散ってしまうのが“桜”なんだとさ」
「そう、ですか…」
突拍子もない言葉にキョトンと瞬きを繰り返していると、彼は「それから…」と呟きながら何かを指差す。
それにつられるようにして目線を動かした先にあったのは……。