小説
□環―リング―
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メジャーに移籍した元希さんに会いにオレは初めて一人で飛行機に乗り、アメリカにやってきた。 元希さんがアメリカに渡って早1年。会うのも1年ぶりということはないが、半年は経っていた。
空港での待ち合わせ。
―――遅い。3時には練習が終わるから4時には余裕で迎えに来られるって言ってたのに…
時刻はすでにそれを回っていた。
練習が長引いてるのかな?
きょろきょろと周りを見回す中、オレの前をいかついスーツを着たアジア系の集団が通りすぎた。
うわっ。なんだよ、このいかついヤツら…
そんな興味の目で見ていると、その中の一人がこちらにやってくる。
え。なに?見てたのバレタ?
文句言われる?
「はぁーい」
そう構えていると、ありえないくらい笑顔で話しかけられた。
「え?…オレ?」
「イエーッス!!君旅行者?ジャパニーズ?チャイニーズ?」
「え、あっ、とっ、ジャパニーズ…」
「オーゥ!!日本の女の子だぁいすきです!小さくて、シャイで、おしとやかで、母国の女の子なんかよりずうっとタイプでぇす!」
「はぁ?」
なに言ってるかわかんねぇけど、もしかしてナンパしてんの?この人。
不審に窺っていると、どこから取り出したのか一枚の紙切れ。
「僕はシルバー。しばらくロス市内のホテルにいるんだ。これ僕の携帯番号。暇だったら、いつでも遊びに来て?」
うげぇ…。あまりにも胡散臭くて、しかしどう切り抜けてよいのかわからない。どうしよう…とその場で固まってしまった。
しかし、すぐ助け舟は現れた。
ナンパ男の差し出した紙切れを、その男の後ろからサッと引き抜かれるのに、そちらに視線を向けると、自分のよく知ったヒトがいた。
「ああ?」っとナンパ男もすぐさま振り向く。
「おいコラ。ヒトの彼女になにしてんだよっ。」