小説

□阿部誕☆
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ピンポーン―――…

「タカヤー。誕生日おめでと」

家のチャイムに音に玄関のドアを開けると、
武蔵野の制服を着て、右肩に部活用のカバンをさげた元希さんが、
多分ケーキであろう箱をこちらに差し出し、満面の笑みで立っていた。

え…なんでいるんですか?
咄嗟のことに固まっているとすぐに後ろから母親の声がして。
「あら、元希くんじゃない?」「こんばんは」「もしかしてタカのお祝いにきてくれたの?ありがとねー上がって上がって」「夜分にすみません」
なんだこのやり取りは…。元希さんも猫被りすぎでしょ。
心の内を余所に、どんどん二人で盛り上がり、母のお気に入りの元希さんはいつのまにかオレの部屋に通されていた。

そして今、目の前には元希さんが持ってきてくれたケーキが切り分けられて、2人分並んでいる。
そのお皿を元希さんはオレに差し出して、食えよと言った。
「…や、さっき晩飯食ったとこなんで、後からいただきます。」
「フーン。そっか。」
まるで自分の家でくつろぐ元希さん。
「元希さんは食べないんですか?」
「オレ甘いもんあんま好きじゃねぇから」
素っ気ない返答に、なんで買ってきたんだ?と訝しげに視線を向けていると、目が合う。
片方の口角を上げ、笑む顔は、何かをたくらんでるとしか思えない。
嫌な予感がして、思わず後ずさりした。
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