小説
□保健室の準さん
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8月――――。
ジリジリと焼けつく日射しの中、桐青高校の門をくぐった。
夏休みだが、学校の中は生徒の気配は絶えない。部活動に取り組む者、夏期補講に通う者、目的は様々だ。
自分にも覚えがある。毎日毎日通った。
蜃気楼でも起こりそうなほど熱い太陽の日射し、青い空の下、砂埃の舞うこのグラウンドに―――。
高瀬準太は、産休をとられる先生の代わりの臨時保健医として桐青高校にやってきた。
高瀬も桐青の卒業生だったので、よく知る顔の先生から激励を受けたり・・・
何より数年前バッテリーを組んでいた河合和己が、桐青の体育教師として働いているので、またしばらく同じ時間を過ごせることが嬉しくて・・・
初日の挨拶は緊張することなく終わった。
「お前の職場、みてくれば?」と鍵を預かった。
扉を開けると少しツンとした薬品の匂い。
ぁあ。ここがしばらくの間俺の居場所になるんだ。
ギシッ。
鍵はかかっていた、自分が開けた。
誰もいないはずなのにカーテン越しに物音がした。
誰かいるのか?
何気なしにあけたカーテンの向こうにいたのは、
押し倒された女生徒と、それに馬乗りになっている男子生徒。
それが島崎慎吾との出会いだった――――