番外編置き場

□温盛
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物心ついた時、僕は既に兄と二人きりだった。
両親の事は何も聞かされておらず、僕も聞かなかった。

聞いちゃいけない…――。
そんな、気がした…。


兄はいつも帰りが遅かった。
帰って来ては寂しそうな雰囲気で、でも僕に心配掛けまいといつも笑顔だった。

僕はそんな兄を見るのが
辛かった…。

だから…――。




兄『何だって…?』

僕『ボクも兄さんのやってる仕事やる。』

兄『魔鬼にはまだ出来ないよ。大丈夫…魔鬼は何も心配しなくて良いから…ね?』

僕『やだ!兄さんの寂しそうな笑顔を見るのはもうヤなんだ!
だから…ボクも兄さんと同じ仕事すれば…兄さんへの負担も無くなるでしょ?』

兄『魔鬼…』


兄さんを…
困らせている…――。

そう、感じた。
でも…この思いは
止められない…。

好奇心。
唯、それだけ。

兄さんは仕事内容を決してボクに教えてくれない。
だから…幼いボクはひどく興味を持っていた。

それが
地獄を招くとも知らずに…。





兄『…魔鬼…。いけないよ』

僕『なんで?ねぇなんで??』

兄『…それは…』

『良いじゃないか…』

兄『!!』

僕『…?』

その時、部屋にボクの知らないオジサンが入って来た。
兄はその人が現れると酷く怯えた表情を見せた。
まるでその人には絶対逆らえない嫌々従う忠犬みたいな…。

『少年、名前は?』

僕『マキ。オジサン誰?』

『オジサンは君のお兄さんのやっている仕事の偉い人だよ』

僕『兄さんの偉い人?社長さん?』

社長『そんなモノかな』

僕『…ふ〜ん…』

その人の笑顔はどうも好きに慣れそうに無かった。

社長『君、お兄さんと同じ仕事がしたいのかい?』

僕『うん。出来る?』

社長『あぁ…出来るよ』

兄『×××ッ!!』

兄さんがオジサンの名前を叫ぶ。何故か怒っている様に感じた。

社長『可愛い弟がヤりたいと言って居るんだぞ?ヤらせてやれ』

兄『弟は巻き込まない約束の筈です!』

社長『弟からのお願いは…含まれて無い』

兄『ッ…』

僕『…?』

社長『…マキ君…だったかな?』

僕『うん。』

社長『最初辛くて痛いけど、我慢出来る?』

僕『ボクもう三歳でもうすぐ四歳だもん。我慢出来るよ』

社長『クスクス…。いい子だね…お兄さんの為にも、頑張ってね』

僕『うん』

兄『………』

その人は笑顔で言った。
僕は笑顔で答えた。
兄さんは何故か前より
悲しそうな顔を見せた…。
その時の僕はまだ…
理解出来ていなかった。






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