小説

□ずっと側に
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僕がこの世界で
全てを、心の全てを
許せるのは…二人。

兄さんと…轟雫さん
だけだった…。





コンコン、ガチャ…

「魔鬼…?寝てるの?」

部屋を弱々しくノックし、ゆっくりと扉を開けると部屋に入って来て恐る恐る言った。

魔鬼「…んっ……寝て無いよ?兄さん…」

魔鬼と呼ばれた少年は起き上がり、名前を呼んだ人物に優しい口調で言う。

兄「そう、ご飯食べる?」

兄さんと呼ばれた少年は優しい笑顔で優しく言う。魔鬼を気遣ってる感じだ。

魔鬼「…うん、食べる」

そんな兄の態度に、相変わらずだなぁ、と思い苦笑しながら言う。
すると兄は嬉しそうな笑顔をしながら「分かった、用意するね?」と言い部屋を出た。


抑、この仕事を始め様と思った切っ掛けは兄だ。
最初一人でこの仕事をして居た兄、自分の体を売りボクの食費や養育費や家賃を稼いで居た。しかしボクは兄がそんな大変な事をしてると知らずに暮らして来た。
そして…ある日疑問を持った
ボクは聞いた。

『ボクも兄さんと同じ仕事する』

兄さんは驚いてた。そして駄目だと言った。けど、結果ボクはこの仕事をしている。
兄さんは初めは、『止めないか?』と何度も言って来てはボクは何度も『兄さんが止めない限り止めないよ』と言った。
そして兄さんはその都度困った様な顔をした。

魔鬼「つくづく兄さんを困らせるのが上手いなぁ、ボクは」

ボクは苦笑しながら呟いた。誰も居ない部屋でその呟きは闇に飲まれた。
そして着物を着崩した状態で着ると部屋を出てリビングに行く。リビングでは兄が食事の用意を殆ど済ませて居た。

魔鬼「今日の食事は何?」

ニコッと笑いながら聞く。

兄「今日は定番のカレーにしてみたよ」

兄は振り返り笑顔で答えた。そんな兄の笑顔を見ながら『今日は大丈夫だな』と思って居た。
兄はその日嫌な時が有っても隠して空元気をする癖がある。
だから何時も魔鬼は兄の笑顔を見て、今日は大丈夫だったかどうか確認する。


魔鬼「兄さんのカレー大好き」

ニコッと笑い言う
兄は嬉しそうに微笑んだ。
そして二人で席に付き食べ始める。楽しい会話をしながら。

この瞬間だけは
この時間だけは
現実を忘れられる時だから…。


そして夜
兄はそっと部屋を出た…。
魔鬼はグッとベッドカバーを握り締め己の無力さを嘆きまた誓う。

魔鬼「(兄さんの分までボクが頑張る…)」


何時しかそれが
魔鬼の義務になって居た…。


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