保神 小説
□この恋、きみ色
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Web企画でっかいのとちっさいの
晴れた日のお昼休みの保健室。
いつもは皆で昼食をとっているが、今日は各々の用事で明日葉と派出須の二人きりだった。
「いい、天気ですね。」
明日葉は窓を開け、心地良い風に身を任せていた。
派出須は、机の上にある書類の山に目を通しながら、問いかけた。
「アシタバくん。お茶、飲むかい?」
明日葉は振り返ると、あたふたと書類と格闘している派出須を見て、笑いながら答えた。
「ううん。まだ、いらないかな。」
クスクスと笑いながら窓縁に腰をかけ、派出須の後ろ姿を見つめる。
(どうしよう…抱き着きたくなっちゃった…)
気持ちを静めようと目線を外に向けると、校舎の角に藤を見つけた。
「…藤くん、また告られてる…」
「アシタバくん!」
ビックリして声の方に振り向くと、派出須は机に向いたまま。
どうしたんだろうと黙っていると、派出須は小さな声で謝った。
「…ごめん。大きな…声…だったね…」
「あ…うん…」
派出須は静かに立ち上がると、明日葉に近付いて寂しそうに微笑んだ。
「駄目な大人だよ。小さな事でも、嫉妬してしまうんだから。」
キュッと胸が潰れるくらい苦しくなり、明日葉は派出須に抱き着いた。
「僕だって…僕だって!!簡単に白衣を貸さないで下さい!他の人からハデス先生の香りがするの、嫌です!!!」
「アシタバくん…」
派出須は、そっと明日葉を抱きしめると頭にキスをした。
「うん。貸さないよ…」
明日葉は派出須の胸に擦り寄り、温もりと香りに包まれ安堵した。
「アシタバくんも、僕だけ見て欲しい…」
「先生しか、見てないよ?」
大好きという気持ちを伝えたくて、明日葉はさらに体を密着させた。
大好き…
想いが募って、胸が苦しいんだよ?
どう、表せば伝わる?
派出須は、仕切に擦り寄って来る明日葉が愛しくて、抱き返した。