OP

□きみ不足が深刻です
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今日は朝から何だかイラついていた。

何、とは具体的な原因は分からないけれど、とにかく何に対してもムカついた。


朝食のメニューにも、船員達の喧騒にも、甲板で昼寝しているベポにも。



昼過ぎに丁度いいタイミングで海軍が襲撃してきて八つ当たりしても気が収まらない。(その数時間後に対海軍戦で私の懸賞金が上がったと報告が入った。彼らも大概暇なものだ)




船員に八つ当たりしてしまう自分にもムカついて午後からはふて寝する事にした。


しかし私の部屋はローの部屋、つまり部屋は共同な訳で、一人になりたくてもなれなかった。





ペラペラとローが本を捲る音が耳に障る。



「出てけ」

「ここは俺の部屋だ」

「'私の'部屋でもあるのよ」

「じゃあいいじゃねぇか」

「一人になりたいんだけど」

「知るか」


それきりローは口を閉じてまた本を捲り始める。



朝からのイライラがつもりつもった私はベッドから起き上がり、ローの前まで行く。
私の行動を気にも止めないローにまたイラついて、その手から分厚い医学書を引ったくって真っ二つにした。



「、何しやがんだ怪力女」

「黙れ隈野郎。そんなに本が好きなら本の海で溺れ死ね」


少し、ほんの少しだけれどその行為にスッキリした。
きっとこの部屋の壁を埋め尽くす本と言う本をすべて破いたら私のイライラは静まるに違いない。

でもそんな事をしたらこの男に私が真っ二つにされ兼ねないので手に持った二つに別れた本を放り投げるのに留めた。



それを見てローはため息を吐く。流石に怒られるかと身構えたものの、その口からつむがれたのは思っていたよりも落ち着いた声で。


「こっち来い」

「いや」

「来いっつってんだろ」

拒否したにも関わらず、腕を引っ張られて私はローの膝の上に無理矢理座らされた。



「朝から何イラついてんだ」

「原因が分かってたらとっくにその根元をブッ飛ばしてるわよ」

そう言った私の頭を撫でるローの手が心地よくて彼の胸にもたれ掛かった。


「なんだ、今日はやけに甘えるじゃねぇか」

「うっさい」

朝からずっとイライラしてたのに、ローにかまってもらってから不思議とそれが無くなった。




そこでふと気付く。もしかしたら私はローにかまってもらえなくてイライラしてたんじゃないだろうか。

耳に入る声がローじゃなくて、
目に入る人がローじゃなくて、
彼の視線が私に向いてなくて、
それで私はイラついていたのだろうか。

そうだとしたらかなり恥ずかしい。



「少しは落ち着いたか?」

「…まぁ」

それをローに気付かれたくなくてうつ向いた私にローが言う。
やはりローの声を聞くと安心する。



「本にまで嫉妬するお前も可愛いな」

「 ! 」

…とっくに気付かれていたようだ。



















、待てよ。気付いてやってたとしたら………
そこで顔を上げればにやりと意地の悪そうな顔のロー。


この…確信犯め!!








【後書き】
嫉妬?嫉妬なのこれ?
書いてる内に方向が曲がってきたよ。

自分にかまってもらえなくてイライラするヒロインちゃんを影からこっそり見て楽しんでるローさん…だったらいいな


タイトルは『確かに恋だった』様からお借りしました


091105


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