HOTEL DREAM
□そのキメ台詞はどうかと思います。
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半年ぶりの出張。
タクシーの窓から見るこの景色も少し懐かしく思ってしまう。
目的地に近づくにつれ私の気分はどんどん上がるばかり。
だって出張先で泊まるのは私の大好きなホテルなのだ。
もう1年程前からお世話になっている。それからだいたいひと月に1度はこの土地に出張があったのだけれど、ここ最近は他の仕事でほぼ会社に缶詰状態だったので本当に久しぶり。
他の子は出張なんて行きたくないと言うけれど私は違う。
勿論泊まるホテルも素敵で大好きだけど・・・・・それ以上に会いたい人がいるから。
一方的に一目惚れして一方的な片思い。
相手はホテルに勤務するベルボーイ。名前はジロウさん。
多分、顔くらいは覚えられてる・・・・と思う。
1年前くらいからお世話になってるし、一応顔を合わせればにこりとしてくれるようになったし。最初のころはすごく畏まった感じだったのがだいぶ柔らかくなったような気がする。
短い間にどうにか印象付けようと名刺を渡して、名前と顔を覚えてもらおうと頑張ったり、姿が見えれば大きく手を振ってとにかくアピールしてきた。(若干顔が引きつってたとは思うけどね!)
1か月に1度、しかも顔を合わすのは数分程。
だけど営業用でも微笑まれると心臓が尋常じゃない速さで動き出す。
目が合えば恥ずかしくて、反らしたいようなそのまま見つめたいような複雑な気分になる。
あぁやっぱり私はこの人が好きなんだと会う度に思い知ってしまう。
「(それにしても半年ぶり・・・ドキドキして倒れたらどうしよう)」
無意識ににやけてしまう顔を引き締めてぐっと顔に力を入れる。
隣の上司の「お、もうそろそろだな」という言葉に心臓が大きく跳ねた。
だってほら、少し先に見えてる。
ドアマンの人の近くにいる彼。
メインエントランスに立つ姿。距離があっても分かってしまう。
ジロウさんだ。
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