HOTEL DREAM

□物語をはじめようか
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ゴウンゴウンと大きな音を立てる洗濯機。
午前中からフル稼働してやっと終わりそう。この脱水作業が終われば私の仕事もひといきつける。

電子音が聞こえ脱水が終わったばかりのシーツを取り出す。
これを干してそのまま休憩しようかな。
しばらくリネン室に籠って洗濯ばかりしていたから身体が固まってしまった。
せっかくだし風の当たる場所で休憩しよう。気分転換も含め。
私は洗濯物をカゴに入れて部屋を後にした。




「よいしょ、っとこれでラストかな。」

たくさんの真っ白いシーツが風に揺れている。
ちょうどホテルの裏手のこの場所は意外と良い日が射して洗濯を干すのにはもってこいの場所。
真っ白い海の中にいるようでどこか心地良い。
一息吐いてしばらくこの光景を眺めていると、近くのベンチに人影が見えた。

(あれは・・・)

そろそろとゆっくり足音を立てずに近づく。
揺れるシーツの波を掻き分けて進むと投げ出された足が見えた。
・・・やっぱり。

「(寝てるのかな?)」

ベンチに背を預けるようにして寝ていたのはこのホテルの同じ従業員。ドアマンのヒサシさんだった。
正直、彼じゃないかな?とは思っていた。
よくこのベンチで休憩しているのを見たことあるから。
どちらかというと裏方な私と表に出ている彼とは接点は無かったんだけれど、一か月くらい前にフラーっとヒサシさんがここに来た事によりちょっとづつ交流し始めた。
干したシーツの側で煙草吸わないで下さい!て何回も注意したことか。
喫煙所なら従業員用のもあるのにそこにはあまり行かないみたい。ここの方が遠いし日差しもキツイと思うんだけどな。
そんなにここが気に入ったのだろうか。






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