HOTEL DREAM

□幸せのあしおと
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ベットメイクが終わりごみが落ちていないか隅々まで確認する。

(・・・よし、大丈夫。)

古いシーツをカゴに入れて部屋を後にする。
まだチェックイン時間までは余裕がある。それまでにランドリー室にある洗濯物を片付けてしまおう。
連泊中のお客様もいるから足音に気をつけながら急ぐ。
STAFF ONLYのドアを開けて従業員専用の階段を転ばないように気をつけながら下りていると階段を上ってくる人が1人。

その人の姿を確認した途端に胸がドキリと鳴った。


「お疲れ様。」

「あ お、お疲れ様です。」


両手は塞がっているから頭だけペコリと下げる。
コンシェルジュの彼がここを通っているのは珍しいなと思いつつもここで会えた事に密かに喜んだ。
このHOTEL GLAYのコンシェルジュのテルさん。

そのルックスと甘いマスクに惹かれて彼目当てのお客様が多いというこのホテルに無くてはならない存在だ。
惹かれているのはお客様だけではなくて女性従業員の大半もテルさんを好きな人は多い。
私もその中の一人ではあるのだけれど・・・・

華やかなコンシャルジェと地味なリネンスタッフ。

何だか気後れしてしまってなかなか話しかけられない日々。
だからこんな偶然にも会ってしまうとドキドキして言葉が出てこない。
知らずにカゴを持つ手に力が入る。
顔を直視できなくて俯くと、テルさんの手にお皿が見えた。
チラッと覗くとその中にはこんがり焼けたお菓子。
クッキーにタルト。マカロンにダグワーズまで色んなお菓子がいくつか入っていた。


「(・・・おいしそう)」

「食べたい?」

「あ!すすすすみません!つい見てしまって」

「あはは いいよ、おいしそうだもんねこれ。
今度お客様に出そうと思ってる試食品なんだ。支配人に味見して貰おうと思ってね。」

「そ、そうなんですね・・・」


お菓子をじっと見ていたのが恥ずかしくて顔に熱が集中するのが分かる。
うぅテルさんの前で恥ずかしすぎる。

とりあえずこれ以上恥をかかないように去ろうと思いそれじゃあ、と横を通り過ぎようとした時。


<(`^´)> と名を呼ばれた。


「え(なんで名前を・・・)」

「内緒、ね?」


突然の至近距離に驚く暇も無いまま。
口元にクッキーが触れた。
思わず条件反射で口を開くと中に押し込まれる。


「むぐっ」

「おいしい?」


テルさんはそう言うと抜き取った指をペロリと舐めた。






な!



それ、さっき私の唇に触れたのに・・・・!




頭が今にも爆発してしまいそう。
その場から動けずただぼんやりとテルさんを見つめていると、「じゃあ頑張ってね」と一言残して去っていた。




味なんて分からないままのクッキーを飲み込む。


どうしよう・・・・・

好きなの止められなくなっちゃった・・・!






















「なんか楽しそうだねテル」

「んーやっぱりそう見える?ちょっと、ね」












END
 

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