Short Dream
□アイリス
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何となく歩いていこうと思ったんだ。
天気は良いし風は気持ち良いし。
車で行くのは何だか勿体無い気がした。
そしたら普段は車でただ通り過ぎるだけの道がやけに新鮮に感じられた。
あ、こんな所にカフェがある。
お、公園もあるじゃん今の時期にここでのんびりしたら気持ち良いだろうなぁ〜。
なんて結構この辺に住んで長いのに新しい発見が多くて少しワクワクした。
眩しい日差しに少し目を細めながら足を進める。
もう少し早く家を出たらゆっくりとこの辺を散策出来たのになと後悔。
そんな事を考えながらきょろきょろと目を動かしているとふと、数メートル先に色とりどりの鮮やかなものが目に入った。
(お花屋さん・・・?)
少し足早にそこへと向かうとこじんまりとした店の店頭に美しく咲き誇る花の数々。
思わず目を奪われた。
(綺麗だな・・)
素直な感想だった。
ここ最近こんなにまじまじと花を見る機会等無かったから。
花ってこんなに綺麗だったけ?と思ってしまう。
しばらく立って店先に並ぶ花を見る。
赤、ピンク、黄色。
色鮮やかな花達に目を奪われる。
心が洗われるってこういう事を言うんだろう。
気持ちがすぅっと穏やかになる。
視線を店頭から中へと移した時、とある花に目が止まった。
そんなに派手ではない紫色。
真っ直ぐに伸びた草丈は凛としなやか。
その先にある花はどこか儚げで、けれど見ていると心の奥が温まるような気がする。
なんている花だろうか、とゆっくりと店の中へと入る。
この花を見た瞬間 頭の中に浮かんだのはあの子の笑顔だった。
仲の良いスタッフの一人、名無しさん##NAME2##ちゃん。
この花と同じように咲き誇る彼女の笑顔が脳裏に浮かんだ。
(やばいなぁ〜・・俺。)
心の中で苦笑しつつも顔が緩むのは止められなくて、頭に浮かぶ彼女の笑顔を消す事も出来ない。
名無しさんちゃんの事を考えるだけで高鳴るこの気持ちを何というかなんて、もうとっくに知っている。
店の中へと進む程に様々な花の香りが強くなる。
そして目当ての花へとやってきてそっと手に触れる。
(なんていう名だろう?)
「気に入ったかい?その花」
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