Short Dream

□淡恋【前編】
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「いってー!」


「な、何!?」



何かが落ちる音と悲痛を叫ぶ声に目が覚めた。
慌てて起きあがると、ふと、違和感に気付く。


――ここ、どこ?


周りを見渡すと見慣れない家具が並ぶ部屋。
自分の場所を確認すると普段使っているのより明らかに大きなベットに座っている。

何かの見当違いだろうか。

頭の中で何故ここにいるのか、と思考を張り巡らせていると、
ベットの端に動き出す影を見て一瞬心臓が跳ね上がった。

身動き出来ないままその影に視線を送っていると、ゆっくりゆっくりと立ち上がった。


「て、テルさん!?」


「あぁ名無しさんちゃん、おはよう。」


腰を打ったのか、さすりながらはにかんで笑うテルさん。
どうやら物音の正体は彼がベットから落ちる音だったようだ。


ますます意味が分からない。


何で?
どうしてテルさんがいるの??

寝起きでまだ働かない頭をフル回転させ昨日の出来事を思い出す。




昨日は確かライブが終わってそのままメンバーとスタッフで打ち上げという事で会場近くの居酒屋に雪崩れ込むように入った。
メンバーもスタッフも相当テンションが高くて私もみんなの勢いに流されるまま飲んで・・・

飲んで・・・・


・・・・・。



そこからが思い出せない。

途切れ途切れには覚えているが、何でテルさんとここにいるのか、という経緯が分からない。

どうやらここは彼の部屋みたいだ。
よく見ると見覚えのある服などが無造作に掛けてある。
テルさんのだ。


一気に血の気が引く音がする。

テルさんが一緒にいるって事はもしかして昨日私が酔って醜態を晒し迷惑をかけたんじゃないだろうか。
優しいテルさんの事だから気を使って介抱してくれたのかもしれない。

だとしたら一大事だ。
メンバーに、ましてやこっそり想いを寄せているテルさんに迷惑をかけてしまったなんて。
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