Short Dream

□月の夢
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“いってらっしゃい”

と、笑顔で言われて何故だか胸がざわついた。



これからツアーでしばらく帰って来る事が出来ない為、しばしの別れになる。
合間にたまに帰ってくるにしても居てあげられる時間は限りなく少なくて結局悲しませる事になる。

彼女をここに一人残すのは不安でしょうがない。
俺も名無しさんもいい大人だからある程度の事は出来るのだけど、やっぱり離れていると心配でしょうがない。


そして何より離れるのは辛い。



名無しさんはどうしたの?と俺の顔を覗き込む。


いかないで、側にいて。


なんて言って欲しいなんて、
笑顔じゃなくて泣いた顔が見たいなんて、

少しでも思った俺は愚かだろうか。



自分よりも小さい彼女を胸に抱き寄せ、壊さないようにゆっくりと力を込める。
胸いっぱいに彼女を閉じこめ温もりを感じる。
それだけでひどく安心できる。


「ごめんね。寂しい思いさせて。」


「謝らないでよ。私なら大丈夫だよ?」


「うん・・・」




君が大丈夫でも俺は・・・・



身体をゆっくりと離し、彼女の肩に手を置く。
ゆっくりと顔を近づけ首筋に噛みつくようなキス。


「・・・っ!」


「印、残していくから。」



一度大きく見開かれた瞳はしばらくして柔らかく弧を描き
優しい微笑みに変わる。



「いってらっしゃい。」


「いって来ます。」


また微笑む彼女を見てやっぱり彼女には笑顔の方が似合うな、と確信した。



END*


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