Short Dream

□かわいいオオカミ
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「何度目?」

「・・・うぅ。」

「何でそんなに嫌がるかなぁー。」


人間、苦手なものの一つや二つはあるものです。




かわいいオオカミ




私の苦手なもの恋人とのキス。
すなわち、テルさんとのキス。


事の始まりはほんの少し前。テルさんの部屋でテレビを観たり音楽を聴いたりとのんびり過ごしていた時だった。
私はラグの敷かれた床に座りテレビを観ていた。
少し仕事があるからと部屋へとこもっていたテルさんが戻って来て私の隣へと腰を下ろした。

「名無しさん」と名前を呼ばれて振り向く。

だんだんと近づく彼の顔。

それを私はつい手で押さえてしまったのだ。


テルさんは軽く眉間に皺を寄せて私の指と指の隙間から不機嫌そうなしせんを送ってくる。

「なに?この手。」

パッと素早く手をどけて後ずさる。
やってしまった・・・と思った時にはもう遅くてヒヤッと背筋に冷たいものが走る。

テルさんは分かりやすいようにため息を吐くと少し離れたソファーにどかっと音を立てて座った。


そして文頭に戻る。




別にテルさんが嫌いとか、キスが嫌だとかはまったくない。
ただドキドキし過ぎて耐えられないだけなんです。だから苦手。

もともとグレイファンだった私は色んな人の繋がりからお知り合いになれてそれだけでも一生分の運を使い果たしたと思っていた。

そして一番好きだったテルさんと恋人同士になれた。
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