Short Dream

□こんな一日。
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久しぶりの休みに名無しさんを家へと招き入れる。

電話やメールは毎日のようにしていたけれど実際に顔を見て会うのは久しぶり。

少しの期間会わなかっただけなのに名無しさんの顔を見て、電話越しじゃない声を聞いて緊張してしまう自分がいる。

この歳でこんな気持ちになるなんて自分でもビックリしてしまう。




日中はのんびりと映画を観たりお互いの仕事の話をしたりした。


どうしてだろう。
ただ近くにいるだけなのにこんなにも恋しくなる。
ぎゅっと抱きしめたくなる。

でも名無しさんがあまりにも楽しそうに話すから手を出せずにいた。
欲望のまま行動してしまう事はとても簡単だけど、そうしてしまうと名無しさんに嫌われるんじゃないかとほんの少しの臆病風に吹かれてしまう。
名無しさんに関してだけはなかなか心が成長できない。

けれどもこのもどかしさは別に嫌いではないんだけどね。



日も傾きはじめ俺は夕食を作る為にキッチンに入った。
今日は名無しさんの好きな物を作ろう。
“おいしい”と微笑む君の顔が見たいから。




少し料理に集中しすぎたみたいだ。
ふと名無しさんの様子が気になってソファーに座る彼女に視線を送る。
時折テレビの音に混じれて聞こえていた彼女の笑い声はまったく聞こえず、耳に入るのはステレオの音のみ。
もたれ掛かったままピクリとも動かない。

ゆっくりと彼女の元へと歩み寄る。
案の定彼女は夢の世界へと行っていたようだ。
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