◆UNDER◆
□今日も貴方の熱に溺れる
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「名無しさんー」
バスルームから声がして慌てて駆けつければ湯気の立つ浴室からひょっこり顔を出しているテルさん。
「どうしたの?」
「あ、ごめん着替え持ってくるの忘れたんだよね」
持ってきてくれる?と申し訳なさそうに言う彼の申し出を断る理由なんて全くないのでクローゼットから下着と、適当に選んだ服を持って再び脱衣所の戸を開く。
「入りますよー・・・・・って、うあっ!」
ガラッと戸を開けると目の前に強烈に飛び込んできたのは彼の裸体。
いや、正確には腰にタオルは巻いてあるのだけれど・・・
筋肉質だけどほそやかな身体とか
肩から腕にかけてのラインとか
濡れた髪とか・・・
思わず見惚れてしまい言葉につまる。
別に今、初めて彼の裸を見たわけじゃないのに。
わずかに火照った身体が男性なのにすごく色っぽいと思ってしまう。
「名無しさん?」
「あ、ご、ごめん!はい、これ着替え・・」
「うん。ありがとう」
ニコッと微笑まれて心臓がドキンと跳ねた。
もう、この人本当に心臓に悪い・・・!
恋人としての期間は短いわけじゃないけれど、このふとした時にドキッとさせられる所は付き合う前と変わっていない。
本当に魅力的な人なんだテルさんは。
どれくらいぼんやりしていたのだろう。
気付けばテルさんが心配そうに私の顔を覗き込み、「名無しさん?」と呼んでいた。
「ご、ごめんなさい!じゃ、じゃあ私はこれで、」
「あー、ちょっと待って」
なに?と聞く暇もなく、腕を引き寄せられてそのまますっぽりと彼の身体におさまった。
風呂上りの上がった体温を衣服越しに感じで心臓がドキンと跳ねる。
「ど、どうしたの?」
目のやり場に困りつつ俯きながら聞くと返事の代りにぎゅっと抱きしめられた。
本当にどうしたんだろう?と思いながら顔を上げると少しだけ困ったような笑みを向けられた。
「んー・・・そういえば最近あんまり構ってあげられなかったなぁと思ってね」
ゆっくりと頭を撫でながら、ごめんと呟くテルさん。
私は胸が締め付けられるように切なくなった。