Ring
□Ring 03
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名無しさんは花が好きだった。
『テルさん見て!すごく綺麗。』
ヒラヒラと彼女の周りを舞い散るのは桜の花びら。
無数の花びらが風が吹く度に散る様子は幻想的で儚い。
『・・・・・キレイ。』
目を細めてその光景に魅入る彼女。
俺はそんな彼女の横顔を眺めるのが好きだった。
彼女の手を取りぎゅっと握る。
――名無しさん、
来年もまたここで桜を見よう。
二人一緒に。
これから色んな季節に色んな花を一緒に見よう。
来年もその次の年もずっとずっとこれから先も。
ずっと一緒に――
そう言うと名無しさんは宙を舞う桜の花びらと同じピンク色に頬を染めてとてもうれしそうに笑ったんだ。
Ring 03