本棚
□虹が架かる2分前
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うっとーしぃ雨…。
梅雨真っ盛りの農大は、どす黒く大量の涙を孕んだ雲に覆われて、昼間だと言うのにひとすじの光も見えない。
傘をさしていても、吹き付ける雨にはあまり効果がないような気がする。
所々水溜まりができている弛い地面をヒールで踏みつける度に、バシャバシャと大袈裟な音を立てて、あたしの足を汚していく。
「はぁ…早く行こ。」
「せやな」
「…え!?」
独り言への不意な返答に驚いて、足を止めて振り返る。
「ぅわっ何や突然止まんな!」
「ああアンタいつから後ろにいたの美里」
陰鬱な空とホラーな雰囲気も手伝ってか、必要以上に動揺してしまう。
「結構前からやけど…雨音で気付かんかったんか」
「そう…そうね」
気を取り直して、また歩き出す。
変な距離。
無意識に足早になる。