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□虹が架かる2分前
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「…いつまで付いて来るのよ」
「俺も蔵に行くんや。しゃーないやんけ」
「じゃあ隣歩きなさいよ。後ろにいられると落ち着かないの」
パシャパシャ。
2つの足音。
「………」
「………」
やっぱり変な距離。
雨音だけが、鼓膜を刺激する。
「…なぁ」
先に沈黙を破ったのはあっち。
傘越しに、隣を見る。
「何?」
「その…な。良かったんか?…婚約者のこと」
前を向いたまま、言い出しづらそうに呟きかける。
「はぁ?今さら何言ってんの」
「せやけど」
気にしてるのだろうか。
あの事は、彼らがいなければ、解決していた気がしない。
感謝すら、している。
「…スッキリしたわ。それだけよ」
「なら、ええんや」
「…バカね。何でアンタがそんな顔するのよ」
もれる苦笑。
意外とお人好しなのも、知ってる。