るろうに二人

□月夜、二つの邂逅
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「ッのガキがぁ!!!」


ドッガア




イラついた男の大声がしたととたんに、戸が吹っ飛び、幼い少年が一人、放り出された。



「今日中に米俵百俵、西の倉に移しとけって言っただろうが!

出来ねぇじゃねぇ。やれってたらやるんだよ。」


そんな、理不尽な言葉を少年に投げつける。

そして、自分が持っている酒瓶に口をつける。

横目で少年を睨みながら。


顔を上げた少年は、何故なのか笑っていた。

男はそれにイラつき、少年に向かって酒瓶をぶち当てた。


「何ニタニタ笑ってんだ!!!!!」



ゴンっと、鈍い音を立てて、少年の頭にそれはぶつかった。

一気にそこからは生暖かい液体が流れ出し、焼けるように熱くなる。

それでも少年は、俯きながらも笑みを浮かべる。



「いいかッ、ちゃんと仕事こなすまで屋敷には入れねぇからな!
今夜は外で寝やがれ!!

チッ。」


男は舌打ちをする。


「まあまあ父さん。」


若く、人相は良いとは言えない女性が、男の方をぽんっと叩く。

父さん、と呼ぶからして男の娘らしい。


まあまあ、と言うのは少年を哀れんで言った様には見えない。



後ろから聞こえてくる罵声を耳にしながら、少年瀬田宗次郎はその場に背を向けた。

眼前には、ただただ真っ暗な闇が広がっていた。








ガラガラガラ



宗次郎は井戸から水をくみ上げる。

水の入った桶に手拭いを浸し、先程血を流した場所に押し当てる。



「…………」


「っ…、遂に道に迷ってしまった…。」


「!?」




ただの興味本位。

それが、宗次郎の人生を大きく変える。




気になった宗次郎は、声のした方ヘと駆けて行く。

と、そこでズサァッと、砂と何かがこすれる様な音がした。



「うわぁっ!」


「おろっ!!!」


「え…え…??」



どうやら、先程の声の主が転んだようだ。




「だ、誰か、いるの…k…じゃない、ござるか!?」



何か、「ござる」というのを言いにくそうに言う。


「す…まぬ、実は道に迷ってしまって…町の方へはどうやって行けば良い…でござるか?」



「(まい…ご?いや、迷大人?)えっと…道案内…します…。」


宗次郎は、ニコッと笑った。



「お、ろ…良いのでござるか?」


「別に、構いませんよ。」


まだ幼い少年に吃驚したのか、青年は戸惑うが。


「そ…それは、助かる…でござる。」



青年も少年と同じく、人のよさそうな笑みを浮かべた。







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