るろうに二人

□呼び名
1ページ/1ページ







なんか、自分が不思議








第十五幕









「こーんにーちわー」


「あら、綿衣ちゃん。いらっしゃい。」


「お邪魔しますー。華乃ちゃんは?」


「今、宗ちゃんと小国先生のところに。
お買い物も頼んじゃったから、ちょっと時間かけてるみたい。
もう少ししたら帰ってくるはずよ。

綿衣ちゃん、寺子屋帰り?」


「あ、ううん。今日はちょっと、警察署まで……」


「警察?」


「……」







何日ぶりになるやろうか、うちは神谷道場を訪れた。
勿論、華乃ちゃんに会いに。
けど、当の本人はいーひんかった。

ほー宗くんと一緒かー
なんか面白そうやなー…







『ただいまー。』


「ただいま帰りました、あれ?梨倉さんじゃないですか」


『あ、久しぶりだね、わたちゃん!』





渋紙色の髪をした彼女は、相も変わらず綺麗に優しく微笑んでいる。






「はいどうぞ、神谷さん。人参と大根とお酢でよかったですよね?」


「えぇ、ありがとう宗ちゃん。」





おぉ、宗くん意外と力持ち…
よーさん持ってはるわ。
っていうか…ん?




『わたちゃん、私の部屋分かる?』

「うーん…微妙。この家広すぎんねん。」

「まあ道場ですから、仕方ないでしょう。僕も、最初は困りました。」

『私お茶淹れてくるから、宗次郎くん私の部屋までお願。』

「あっはい。」

「……」






宗くんと二人きりになるのに、うちはもうときめいたりせぇへん。








『おまたせって、なにしてるの!?』

「んー
あ、ごめんごめん、そこにあったから…」




##NAME!##ちゃんの机の上においてあった物語の本をぺらぺらと呼んでたら、当の本人が帰ってきた。

うちはその本を机の上に戻して、二人で縁側の方へ出た。





『はい、どうぞ。』

「ありがとう」




華乃ちゃんの持ってきてくれた湯飲みを受け取る。
ついでにおせんべいも、持ってきてくれたみたい。





「おいしいなぁー」

『ねー』




ほんま、のんびりした気分になるわ。
春やからかな?





「あっ、そうそう!」

『?』





さっき疑問に思った事を思い出した。
空を見上げていた顔を、彼女の方へと向ける。





「あんさ、宗くんってあんたのこと"華乃さん"って呼ぶやん?」

『え、あ…うん。』

「他の人のことって、なんて呼んでいやはる?」


『えーっと…お姉ちゃんを神谷さん、剣心さんを緋村さん、弥彦君はそのままで、左之助さんを相楽さん、恵さんを高荷さん、それから……』


「あーもうええよ、うん、ありがとう。」




言い出したらきりないわ。
けど、やっぱりそうか。

うちはおせんべいを手にして、一口。








「弥彦君とあんた以外、みんな苗字呼びやん。」

『え、あぁ、そうだね。』





華乃ちゃん気づくの遅い。






「なんか理由あるんちゃうのん?」

『さぁ?ないと思うよ?
けど、最初は明神くんって呼んでて、後から気持ち悪いとかどうとかで、弥彦君になったんだよ。』

「ほーう、じゃあ最初から名前呼びなんは、華乃ちゃんだけなんやな?」

『…?うん。』

「何かそれっておかしーない?」

『そう?お姉ちゃんも私も神谷だから、分けてるんじゃないかな?』

「それやったら薫さんのことやって、薫さんって呼ぶやろ?」

『え…え?』




宗くん、それは無意識なん?
それとも確信犯的なやつですか?

呆けてしもうたうちは、再び空を仰いだ。
あー空ってなんでこんな青いんやろーなー





「華乃殿、ちと……
あ、友人が来ていたでござるか。」

「あ、ええですええです!もう帰りますさかい!」

『玄関までの道、わかる?』

「………」







物覚えの悪い子でごめんなさい。





結局また、宗君にお世話になることに。
すこし軋む廊下。
うちは宗くんを追いかけて、玄関まで急ぐ。




「な、なんかごめんな。なるべくはよう覚えるよう、努力するわ……」

「あはははっ大丈夫ですよ。
僕も覚えるのにニ、三日とかかったんですから。」

「……苦労したなぁ…」

「それほどでもないですよ。」




宗君と一緒にいると、改めて思う。
うち、なんでこんな簡単に諦められたんやろーって。

一時でも好きになった…はずやのに、なんでこんなにあっさりって。
まあ、小三郎さんとの出会いも重なってたけど。

ライバル、っていうのもありかもしれんかったのに。

不思議やなぁ…







「で、宗くんどうなん?華乃ちゃんとは。」

「はい?何のはなしですか?」

「……そうやった、この人も鈍感なんや…」

「?」





なんかじれったくなってくる二人やなぁ。
二人とも、きっと気づいてない。






「なんかなぁ…」

「梨倉さん?」

「あ、ごめんごめん。」




ちょっと考え事してたら、宗くんはちょっと遠いところまで進んでた。
迷惑かけたらあかんな、と思いながらうちは彼の後を追った。












続く
綿ちゃんがすごい書きやすい!





 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ