るろうに二人
□るろうにの名前
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「薫さん、華乃さん。
昼食の支度がありますので、私はこれで…。」
「あ、うんお願いね。」
『もう少ししたら、私たちも帰りますので。』
「はい。では、お先に失礼……」
喜兵衛さんは道場のほうへ帰っていく。
その背中を見ながら、ひむらさんは口を開いた。
「あの御仁は?」
「ああ喜兵衛?
まあ、住み込みの奉公人ってトコかな?」
『男の人なのに、家事が得意な人なんですよ!』
「父が亡くなって、すぐだったかな。
道場の前で行き倒れてたところを、助けたのが縁でね・・・あ、介抱したのは、主に華乃よ!」
『あ…えぇ…まぁ……』
「続けて欲しいでござる。」
「あ、ごめん。そうそう!女だてらに剣術やってる私と、この歳で家事全部をこなしていた華乃のことを、前から心配してくれてて。
剣術止めて、道場売って静かに暮らそうって、言ってくれるんだけどね。」
お姉ちゃんは消えてしまった、喜兵衛さんの方を見た。
ひむらさんが鋭い目を見せる。
「素性は?」
「聞いてないから知らない」
「おろ!」
『あまり、私達には関係ないと思います。』
「おろろ!!!し・・・姉妹そろって、呑気でござるな。」
「あらそう?」
『そうですか?』
呑気・・・・・・なのかな・・・・・・
私、言われたことないや。
「いいじゃない。誰だって、語りたくない過去の一つや二つあるわよ。
あなただってそうでしょ?」
『必要以上に語る必要はないし、聞こうと思えば聞けるし、話そうと思えば話せる。
それなら、知らなくたっていいじゃないですか。
だって、今と昔は違うんですから。』
私たちの意見。
だって、過去なんて関係ないもの。
必要なのは今。
大切なのは今。
今、どうなのかが一番大切。
「そうでござるな。拙者も、そして…」
「ねえ流浪人。
ウチ来ない?泊まりに。」
「あ、いや。」
『?お手伝いはしなくて、いいですよ?』
「そうではなくて拙者、小用を思い出したから。」
そう言って、何処かへ行こうと背を向けたとたん、お姉ちゃんが彼を呼び止める。
「あ、ちょっと!」
「まだ何か?」
「えっと…ね、
その…この前は、その…助けてくれた、礼も言わず、”風情”なんて、その…えっと…ゴメン。
華乃にも、色々言われた。」
止まりながら言うのは、謝ることに慣れていないから。
そにと、気恥ずかしいという思いも、どこかにあるんだと思う。
そんなお姉ちゃんの行動に、口元が知らず知らずの内に緩む。
「何、流浪人は、小さいことは気にせん。
では。」
ひむらさんは、ニッと笑ってそういった。
いい人だなぁ・・・
私は彼に手を振った。