Remix Heart
□Remix Heart-第六章-
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新暦705年
疎らに雲が流れる程度で、陽の光が心地よいそんな日。
開け放たれた窓からは、穏やかな風が緑の香りを運んで来る。
ゆず「今日は過ごし易い日になりそうね」
ここのところ仕事で部屋に籠りきりだったゆずは、窓の外の様子を窺ってから上機嫌でデスクに向かった。
パソコンを立ち上げると、早速仕事に取り掛かる。
今取り組んでいるのは、先の“大戦”に関する本の執筆。 初めて本を書く彼女は、新聞記事を書くのとはまた違った苦労と楽しさを味わっていた。
ゆず「……」
白魚の様な指が、流れる様にキーを叩いていく。 タイプミスは無く、その正確さは機械の如し。
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貴方は、『赤色』から何を連想するだろうか?
『情熱』や『活気』と言った精神的なもの? 『熱暑』や『高温』と言った温度? それとも、『警告』や『禁止』? 人によってまちまちで、挙げれば他にも出てくるだろう。
私は『慈愛』と『憤怒』を連想した。 『憤怒』はまだしも、『慈愛』は違うと思う。 そう考える人もいるだろう。 これが私の連想したものだと言えばそれまでだが、それは本書を執筆するに当たり行った取材の影響も多分にあるらしい。
彼ら“英雄”に、イメージカラーを付けるとするなら『赤』或いは『紅』が相応しいだろう。 異論もあるかもしれないし、良い意味で相応しい、悪い意味で相応しいと言う人も居るだろう。 良い意味でも悪い意味でも、彼らにぴったりだと考える人も居るだろう。
忌憚無く言わせて頂ければ、私は最後の――良い意味でも悪い意味でも、両方の意味で当て嵌まると考える人間だ。
“歴史”を振り返れば解る事だが、過去の戦争・紛争に於いて絶対の正義など存在した例(ためし)がない。 いや、戦争や紛争に限らず、人間に係るあらゆる物事に於いて、その様な物が存在したのだろうか?
“彼ら”の存在や行いの是非についても、この二十六年間で様々な人間が議論を繰り返してきた。 そしてこれについても、全人類が一致した見解を見出せていない。
だから私は『赤・紅』を推す。
人がヒトである以上、直ぐに出ない答えであるならば、私は敢えて『赤・紅』を推す。
出来るだけ感情を排し、出来るだけ客観的な見地に於いて。
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第四話
「紅き陽の慈愛と憤怒」
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