Remix Heart
□Remix Heart-第六章-
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新暦705年
どこまでも蒼く、澄み渡る空。
麗らかな春の陽光に包まれて、子供達が笑顔で芝生の上を駆けて行く。
彼ら、彼女らの母親達も、陽射しと眩い笑顔に目を細め、穏やかな笑みを浮かべていた。
??「…………」
そんな光景を、薄い笑みを浮かべながら見つめる女性が一人。
肩に掛かるくらいの長さの髪は、癖がなく陽の光を照り返して輝いている。
どこか好奇心が旺盛そうな、クリクリとした大きな瞳。 その瞳と丸みがかった小さな顔とが相俟って、少女らしい可愛らしさを残した美しい女性。
彼女の笑みは、外見に似合わず……いや、実年齢よりも更に大人びて見えた。
彼女の名は、『小日向 ゆず』
フリーの新聞記者だ。
ゆず「あれからもう、二十六年経つのか……」
呟きながら、ふと空を見上げる。
視界の隅に入った太陽が眩しくて、手で庇(ひさし)を作って目を細めた。
ゆず「あの頃の私はまだ五歳で、“戦争”っていうのがどれだけ大変な事か、何となくしか解っていなかったんだよね……」
ある意味幸せだったのかも……そう呟き、綺麗に整備された遊歩道に視線を移し、そのまま目を瞑る。
軽く閉じられた目は、散って逝った者達への哀悼の表れか……
それとも――多くの敵を討ち、大勢から恨まれ……それでも尚、『再構築戦争』と『知られざる戦争』を勝利へと導き、“英雄”となった“彼ら”への感謝の表れか。
ゆず「正直複雑だけど……でも、あの戦争があったから今の平和がある。 だから、私達は忘れてはいけない」
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