Remix Heart


□Remix Heart-第三章-
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伊織「ほほう……どういう事だい?」

杉並「二人が付き合い始めたと思われる5月下旬から昨日までの約3週間、例年の気温を1℃から3℃上回っている」

伊織「へえ」

 いつそんなの調べた?

 つーかこいつ、実は暇人なのか?

杉並「非公式新聞部の調査によると、昨今の地球温暖化の大きな原因の一つは、バカップルの放つ甘ったるい熱気だという報告がある。 このままあの二人のような“バカ”ップルが増え続ければ、間違いなく日本州は沈んでしまう!」

 妙にバカのところを強調して言う杉並。

 いつも、こいつがバカなのか天才なのか測りかねるが、紙一重とはよく言ったもので、昔の人の偉大さを変なところで思い知らされる。

伊織「やはり‥‥やはりそうなのか……」

 あ〜もう一人のバカのスイッチが入った。

伊織「もしこのまま日本が沈んだら、二人の兄としてみんなに申し訳ないっ!!」

フィーナ「……」

菜月「……」

翠「……」

小雪「くすっ……」

 フィーナ達がドン引きしている。

 約一名、何やら物騒な笑みを浮かべているが見なかった事にしよう。

 余談だが、当然のように伊織の声は瑛里華に聞こえていて、放課後星にされたらしい。

――――
――

昼:プール

 約2時間に渡って続いた水泳大会も、いよいよ最後の鬼ごっこを残すのみになった。

 プールには、各クラス2名ずつ、計36名の代表選手。

 プールサイドには、鬼役の屈強な男が4人、腕組みをして立っていた。

 迫力を出すためか、顔に隈取がしてあったり、額に『大往生』と書かれていたりする。

フィーナ「中々雰囲気が出ているわね」

達哉「そ、そうか?」

 異文化で育った人にはそう見えるのか?

 感心しているフィーナから視線を外しプールサイドを見ると、かなでがスタート台に上った。

かなで「蒼天既に死す。 黄天まさに立つべしっ!」

鬼「おおおおぉぉぉぉっ!!」

 意味不明な口上だが、鬼達は野太い雄叫びを上げた。

かなで「諸君の相手をするのは、この悠木かなでが召喚したジュードーマスター達だ。 段位は合わせて六段。 チケットが欲しくば、5分間、己の帽子を守ってみせるがいいっ!」

選手達「おおおおぉぉぉっっ!!」

 プールの中からも雄叫びが上がった。

かなで「ではでは」

 かなでが軍配を上げる。

 ビュオオオオォォォォッ……

 一陣の風が吹き抜け、プールを静寂が包んだ。

かなで「レディーッ、ゴーーーーッ!!」

 柔道部員が飛び込み、ぶっとい水柱が上がった。

 選手達が一斉に動き出す。

 だが、水の抵抗もあり、中々思うように動けない。

 並外れた体格の鬼達は、その重量に任せ一直線に水を掻き分ける。

――――
――

孝平side

瑛里華「ねえ、支倉君」

孝平「何?」

瑛里華「紅瀬さん、何で鬼ごっこに出てるの?」

孝平「目立たなくて済みそうだからって、立候補した。 体育祭の時も活躍したし、誰も文句言わなかった」

瑛里華「……やっぱり紅瀬さんは紅瀬さんね」

 千堂さんは、苦笑いしながら言った。

 その紅瀬さんはというと、次々と選手が脱落していく中、静かな表情でプールに立っていた。

 と、鬼の一人が紅瀬さん目掛けて進み出した。

 10メートル程あった距離はあっという間に詰まる。

 だが、紅瀬さんはじっと突っ立ったままだ。

 鬼の丸太のような腕が振り上げられる。

 バンッ!!

瑛里華「危ないっ!」

 千堂さんが机を叩きながら叫んだ。

 バシャーンッ!!

 鬼の腕が水面を叩き割った。

 ………………

 水が割れるって、どんな力だよ? 殺す気か?
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