Remix Heart
□Remix Heart-第三章-
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達哉side
6月13日(金)
昼:教室
昼休みの教室は、ある話題で盛り上がっていた。
明日行われるプール開きの話題だ。
翠「明日ようやく、待ちに待ったプール開きだね♪」
遠山は子供の様に、もう待ちきれないといった表情をしている。
菜月「遂にやってきたって感じだね」
菜月も、どことなく浮かれていた。
フィーナ「地球ではこういうイベントがあるのね……」
そんな二人をよそに、フィーナは興味深そうに明日の予定表を見ている。
音姫「フィーナさん、月にはプールはなかったの?」
フィーナ「ええ。 月では水は貴重だから、飲料水や生活用水、農業用水といった使い方しかされていないわ」
まあ、詳しくは知らないが、そういう余裕がなくても不思議じゃないな。
かなで「せっかく地球に来たんだし、いっぱい楽しんでよ♪」
フィーナ「そうね。 存分に楽しませてもらうわ」
両手を一杯に広げて言ったかなでに、フィーナは声を弾ませながら答えた。
伊織「うんうん、いいねぇ。 実に楽しみだよ」
オッサンじみた事を言いつつ軽薄な笑みを浮かべ、伊織が話しに加わってきた。
隣には、無表情の征一郎がいる。
翠「楽しみって……どうせ千堂君は、女子の水着姿を見たいだけでしょ?」
伊織「そりゃ、俺だって健全な男子だからね。 見目麗しい女生徒の水着姿を拝まずして、この夏を乗り切れようかっ!?」
遠山の、汚いモノを見る冷ややかな視線を気にした様子もなく、拳を肩くらいに挙げて馬鹿な事を堂々とのたまう伊織。
征一郎「堂々と言うな」
菜月「あははは、相変わらずだね」
征一郎がため息を吐いたのを見て、菜月は苦笑いを浮かべた。
小雪「今年は安全祈願はやらないのですか?」
伊織「ああ……妹夫婦の猛反対に遭ってね。 俺としては、プール開きを盛り上げるためにやっておきたいんだけどね」
やれやれと肩を竦める伊織。
まゆき「瑛里華が反対するのも尤もよ。 思い出したくもないわ……」
高坂は、げんなりとした表情で椅子の背にもたれた。
フィーナ「何があったのか、聞いていいかしら?」
音姫「……」
征一郎「……」
まゆき「……」
菜月「あ、あははは……」
かなで「あー……」
小雪「ふふふ」
翠「あ〜、あれは、ねえ?」
ねえ? と俺に振られても困る。
生徒会役員は皆、まるで葬式でもあったかの様に、沈痛でどこか影の差す表情をした。
音姫に至っては、頭を抱えて突っ伏している。
一部黒い笑いをこぼしているヤツがいるが、放っておこう。
フィーナ「……ごめんなさい、忘れるわ」
教室が暗くなったと錯覚する程、暗いオーラが全員を覆った。フィーナが、本当に申し訳なさそうに深々と頭を下げる。
伊織「おいおい、酷いな。 去年はあんなに盛り上がったのに」
何食わぬ顔で言うなっ!
達哉「お前なぁ……でも今年は、瑛里華と孝平が中心になって企画を練ったんだろ?」
征一郎「ああ」
達哉「なら安心だな。 伊織が何もしなければ……」
征一郎「全くだ」
伊織「心配するなよ。 せっかく二人が頑張ったんだ。 その努力を無にするようなマネはしないさ」
まゆき「そう祈りたいわね」
あんまり期待してない様な、疲れた様な表情で・・・・高坂は投げやりに十字を切る真似をした。
――――
――
夜:朝霧家・ダイニング
食後のお茶を飲みながら雑談をしていると、不意に麻衣が話題を変えて話を振ってきた。
麻衣「ところで、お兄ちゃん達のクラスは誰が出るの?」
達哉「ん? 何が?」
麻衣「プール開きの鬼ごっこ」
ああ……
達哉「俺とフィーナ」
麻衣「ふーん、そうなんだ……って、ええぇ〜〜〜!!?」
ミア「ま、麻衣さんっ!?」
一つ頷いたかと思うと、鼓膜が破れそうな位に叫び出す。
ていうか麻衣、そんなに驚く事か?。
ミアまでびっくりしてるじゃないか。
フィーナ「何かまずかったかしら?」