Remix Heart


□Remix Heart-第四章-
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小雪side
8月21日(木)
夜:瑞穂坂町

 水晶やカードは、よりイメージを鮮明にするための補助具に過ぎない。

 強烈な直感は、フラッシュを焚いたようにそのイメージを焼き付けてくる。

 それが、本物の『予知』だ。

 高峰の人間が持つ、三大瞳術の一つ『浄天眼』。

 これはその“イメージ”を捉える事が出来る眼だ。

 しかも私の場合、決まって酷い結末ばかり予知してしまう。

 千堂家の騒動の時は、何も見えなかった。

 結果……支倉君の活躍もあり、伽耶さんと千堂家はいい方向に向かった。

 これからは、幸せな家族を作っていけるだろう。

 しかし、達哉さんの時は見えてしまい……千春さんとの戦い、それによる死別という結果になってしまった。

 千春さんの本当の想いを知る事が出来たのは、達哉さんにとって唯一の救いだったかもしれないが……

 そして――――

 今回も、とびきり不吉な結果が出ていた。

小雪「……」

 防ぐ事は出来ないだろう。 でも、最悪の事態は防ぎたい。

タマ「小雪姉さん、急いだ方が良さそうでっせ」

小雪「そうね、タマちゃん。 急ぎましょう」

――――
――

 対峙する二人の魔術師。

 一人は私。

 そして、相手の魔術師の目的は……カテリナ学院に保管されている魔導書。

 二人の魔力は拮抗し、ぶつかり合い、その結果‥‥

 それが、私の予知だった。

――――
――

夜:カテリナ学院

タマ「相手さん、もう来てらっしゃるみたいですわ」

小雪「ええ、予知通りですね」

 彼女を食い止めるためには、私も全力で応じなくてはならない。 それ程の相手。

 予知した結末を多少なりとも覆すためには、こちらも相応の覚悟をしなければならない。

タマ「そんな顔、小雪姉さんに似合わんのとちゃいますか? そや、帰りに姉さんの大好物のチキンカツカレー食うてきましょ」

 自然と暗く硬くなった私の表情を見て、タマちゃんが明るく励ますように言った。

小雪「……ええ、楽しみにしておきましょう」

 そんなタマちゃんに応えるように、私は笑顔で言った。

――――
――

??「ほう……校舎には踏み込めぬよう、細工をしておいたのだがな。 やはり一筋縄ではいかないという事か、この学院は」

 目の前に立つ少女は、取り乱す様子もなく言った。

小雪「いえ、初めからこうなる運命だったようですよ」

??「運命とな?」

小雪「はい。 出来れば誰とも遭遇しない事を期待して、ここに来たのですけれど。 でも、やはりそれは叶わぬ望みだったようです」

??「なるほど。 未来視の力か……」

 黒装束に身を包んだ彼女は、納得したように頷いた。

??「ならば、これからどうなるかも知っておろうな」

小雪「ええ。 出来る事なら、違う結果を望んでいるのですけれど」

??「阻止するか? 果たしてそれが出来るかの?」

 挑発的に言う少女。

小雪「そうしようとしたところで、結果は同じでしょうね」

??「そうか。 ならば大人しく引くか?」

 今度は僅かに嘲笑が混じる。

小雪「いいえ。」

??「‥‥無駄な事を」

 呆れたようにため息をつき、吐き捨てるように言う。

小雪「無駄かどうかは、やってみなければ分かりません」

??「無駄だ。 そうなる運命だと言ったのは、そちらの方であろう。 ならば、結果が変わらぬ事も分かっておるだろうに」

小雪「ええ。 ですが、私が視たのはこの校舎の行く末まで。 それ以外については、予知していませんから」

 嘘ではない。 だが‥‥

??「‥‥ふん。 そうか」

小雪「そういうわけですので、こうさせて頂きます!」

 瞬間、黒色のマントを翻し、マジックワンド『スフィアタム』を振りかざす。

小雪「タマちゃん!!」
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