Remix Heart


□Remix Heart-第二章-
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孝平side
4月10日(木)
昼:第一演習場

 昼食を食った後の授業は辛い。

 血液が胃腸に取られてるのか、血糖値が上がっているのか。

 何にしても、ひたすら眠いのだ。

 教師すら諦め顔になる。

 だから、時間割のその位置に演習や体育の授業があるのは、絶妙な配置だと思う。

司「行くぞっ、孝平!!」

 今日は実戦形式の戦闘訓練の授業だ。

 珍しく司が起きていた。 そればかりか、活躍していた。

孝平「よっしゃ、こいっ!!」

 印を結びながらこちらに近づく司に対して、こちらも印を結びつつ迎撃態勢を整える。

渉「させるか!!」

司「その程度でっ!」

 渉が印を結ぶより早く、司の蹴りが渉の右肩に命中する。

 渉はそのまま後方に吹っ飛ぶ。

 司は蹴りの勢いをそのまま利用して、前方に大きく跳躍した。

義之「おいおい、自殺行為だぜっ!!」

 そう言うと、後方で呪文を詠唱していた義之が、必殺の一撃を放つ。

 ゴウウウウゥゥゥゥッ!!

 高圧の水の噴流が、一直線に司に襲い掛かる。

 だが……

杉並「フハハハハッ!! 甘いなっ、同志桜内!!」

 杉並は義之の魔法を『見てから』、水の性質に対して優勢な土の性質の術をぶつけた。

 ドパアアァァァァンンンッッ!!

義之「なっ!!?」

 杉並の放った土遁の術が、義之の水魔法を完全に防いだ。

 開いた口が塞がらない。

 何故なら、義之の魔法が司に命中するまでの時間は、ほんの3秒程しかない。

 その僅か3秒で、義之の術が水遁である事を『見てから』土遁を発動し、20m離れた司を完全に守ったのだ。

司「ナイスだっ! 杉並!」

孝平「くっ‥‥!」

 こいつ‥‥この前も食堂で片鱗を見せたが、下忍ってのは嘘だな。

 この動き、少なくとも中忍以上だ!

司「いくぞっ!!」

 印を結び終えた司から、龍のような炎が高速で迫る!

孝平「っ!」

 バッ!

 こちらも印を結び終えた。 簡単にはやらせないぞ!!

司「!?」

 ドパンンンッッ!! ジュゥゥゥウウウウ……

 俺の周りに分厚い水の壁が現れ、炎の龍を完全にかき消した。

孝平「今度はこちらから行くっ!!」

司「上等っ!!!」

 司までの距離は10mもない。 至近距離だ。

 技の出が速い方が勝つ!

 俺が先か、司が先か――

 一瞬で距離が詰まり、ほぼ同時に印を結び終えたその時、横から何かが飛び込んできた。

孝平「待てっ!!」

司「知るかあーーーーっ!!」

 パンンンッッッ!! ゴウウウゥゥゥゥッ!!

 準備していた『烈風掌』を、斜め後方に打ち出し、その反動で司の術を回避しつつ『何か』をキャッチした。

渉「ぎゃあああああぁぁぁぁぁっ!!!!?」

 どうやら、さっき後ろに飛ばされた板橋に当たったらしい。 冥福を祈ろう。

 ピイイイイィィィィ!!

 ホイッスルが鳴り響き、時間終了が告げられた。

 俺たちの小隊の戦闘訓練は終了だ。

司「おい、どうした?」

 頭の上で司の声がする。

孝平「いや、大丈夫」

 ゆらりと立ち上がり、腕の中の物を見せる。

司「ウサギ?」

孝平「ああ」

 兎の雪丸だった。 何が起きているのか分からないのか、赤い目で不思議そうに俺を見る。

司「どっから来たんだ?」

孝平「礼拝堂だ」

司「礼拝堂? 非常食か?」

孝平「何でそうなる。 ともかく、ちょっと届けてくる」

司「礼拝堂は、昼休みか放課後しか人いないぞ」

孝平「マジか」

司「ああ。 放課後までがんばれ」

孝平「つーか、何で授業中は人がいない事知ってんだ?」

司「野暮な事聞くなよ。 じゃ、後は任せた」

 礼拝堂でサボった事があるのか……てか‥‥

孝平「放置かよ。」

――――
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