Remix Heart


□Remix Heartー第五章ー
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昼休み:学院長室

義之「・・・・何で学院長室なんだ?」

由夢「さくらさんに呼ばれてるんです。 さ、入りましょう」

 軽くノックをすると、返事も待たずに中へ入いる由夢。 俺は首を傾げながら、由夢に続いて中に入った。 というか、学院長室ってこんな気楽に入っていいのか? 忘れてなかったら孝平に聞いてみよう。

義之「・・・・・・」

 洋風の豪奢な扉を開いたら、外見とは違和感のある空間が広がっている。

 室内は部屋の主の趣味に合わせて畳が敷かれており、今の季節はコタツまで置いてあるという、全く以って学院長室らしくない純和風な世界だ。 職権乱用だろ、これ?

 しかもコタツの上では、カセットコンロに載った鍋が、いい匂いを放ちながらグツグツと音を立てて煮えている。 何か激しく間違ってないか?

音姫「弟君、遅かったねぇ。 先に食べちゃってるよ」

さくら「そうだよ、遅い遅い! 待ちくたびれちゃったよ」

はりまお「あんあんっ!」

 音姉と一緒に、さくらさんとはりまおが出迎えてくれる。

 さくらさんは幾つもの博士号を持ち、カテリナ学院・学院長の他に『満弦ヶ崎術者協会』の“総帥”という立場にいる才媛なのだが・・・・・・金髪・碧眼・ロリっ娘という容姿と、今みたいな子供っぽい言動のせいで、初対面の人間にはそれらの事実が中々信じてもらえない。

 人は見かけによらないって、この人の為にある言葉なんじゃないか?

 はりまおもちょっと変わっている。

 犬・・・・らしいのだが、こんな種類の犬は見た事がない。 何で頭が身体よりデカイんだ? その縦に割れた目は何よ? さくらさんや音姉を筆頭に、女性陣に言わせれば“可愛い”らしいが・・・・・・

さくら「そんなとこに突っ立ってないで、早くコタツに入って」

義之「あ、はい・・・・・・あの、これは一体?」

 モゾモゾとコタツに入りながら、さくらさんに疑問をぶつける。 学院長室で昼食ってだけでも異例なのに、まさか鍋まであるなんて誰が予想出来ようか。

由夢「さくらさんが、今日は寒いから鍋が食べたいって」

さくら「やっぱり寒い日はお鍋だよね」

 さくらさんは由夢の言葉にうんうんと頷き、事も無げにそう言った。 貴女はご自分が学院長であるという認識がないのでしょうか? 今日は“くえすちょんまあく”ばかり出てる気がする。

義之「・・・・・・学院で、それも学院長室で鍋・・・・シュールだ」

さくら「室内なだけまだマシだよ。 昔は屋上で鍋を食べてた生徒もいたくらいだからね」

義之「はいぃっ!?」

さくら「とても可愛らしい姉妹でね。 お姉ちゃんが特に鍋好きだったから、よく屋上にコタツをセッティングして、お鍋をつついてたんだ」

 変わった学生が多い学院だとは思ってたが、どうやら過去にも相当変なのがいたらしい。 どこまで自由(フリーダム)なんだ、この学院。

 まぁ、今更細かい事気にしても仕方ないか。

音姫「はい、お皿とお箸。 弟君、何が食べたい?」

義之「えっと、それじゃ・・・・鶏肉と白滝、あとは野菜を適当に」

 鍋は鶏肉の水炊きだ。 鍋から立ち上る美味しそうな匂いは、空腹感を更に掻き立てる。

 確かに寒い日は鍋に限るが、まさか学院で食べられるとは・・・・

音姫「そういえば、弟君達のクラスってクリスマスパーティで何をするの?」

 音姉が、取り皿によそいながら興味津々と言った感じで聞いてきた。
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