Remix Heart
□Remix Heartー第五章ー
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まゆき「あんたも大変なんだね」
まゆき先輩が、同情した様に哀れみの視線を向けてきた。
音姫「そ、そんなにおかしい事かな? かなでも征一郎君もこんな感じだよ?」
いや、あんたら全員おかしい・・・・
まゆき「変に決まってるでしょ! 絶対に変、異常だよ!!」
音姫「う〜・・・・」
怒涛の勢いで断言されて、音姉は情けない声を出して不満そうな表情をした。
まゆき「弟君だって嫌がってるでしょ? 止めてくれって言ってる位なんだから」
音姫「そうなの? 嫌なの?」
音姉は俺を見つめてくる。
義之「そ、そりゃ俺も一応男だし、それなりの年齢にも達している訳だから、出来れば止めて欲しいと・・・・」
音姫「本気で嫌?」
途端、音姉は上目遣いでうるうるとした瞳を向けてきた。
その「弟君はそんな事言わないよね?」という捨てられた子犬の様な顔をされると、流石にそれ以上は何も言えなくなってしまう。
義之「ま、まあ・・・・時と場合を考えてくれれば、まぁ、その、そんなに嫌って訳でも」
音姫「だよね!?」
今にも泣きそうだった表情が、ぱっと花が咲いた様な笑みに変わった。
音姫「弟君には、やっぱり私がついていてあげないと」
音姉は「どう?」と胸を張りながらまゆき先輩を見た。
まゆき「この話をする度に、毎回同じパターンでやられてるってのは、よぉ〜〜く分かったわ」
義之「い、いや・・・・あのですね、まゆき先輩・・・・?」
こめかみをヒクつかせているまゆき先輩に、何とか弁明しようと試みるも、キッと睨まれ二の句が継げなかった。
でもね、まゆき先輩? あんなにも悲しそうな視線を向けられて、それでも尚突っぱねられる男が、この世に何人いるんですか?
まゆき「とにかく! 今は仕事! みんな待ってるんだから!」
孝平「・・・・・・ホント頼みます、朝倉先輩」
瑛里華「後の楽しみに取っておくって事で、ここは一つ・・・・・・」
義之「うおっ!?」
いつの間にか、別の場所で対応に追われていた孝平達が側に立っていた。 一瞬、同情の視線を向けてきた孝平だが、この気持ちは分かるまい・・・・・・つーか千堂、後回しにもしないで欲しい。
まゆき先輩達は頷き合うと、音姉の襟首と両手を掴み、そのままズルズルと待っていた者達の所へと引き摺っていく。
音姫「え? あっ、ちょっと!? お、弟く〜ん!」
連行されていく音姉を、ホッと見送ったのも束の間。 ハッと気付くと、周囲から形容のし難い様々な視線を向けられていた。
義之「も、戻るか・・・・・・」
気まずさからその場を離れようとしたのだが・・・・・・渉に背後からがっしりと肩を掴まれてしまう。
渉「なぁ、義之・・・・」
義之「な、なんでしょうか?」
渉「何つーか、言いたい事が山程あるんだが、とても言葉では表現出来そうになくてさ。 この際、態度で表してもいいかな?」
渉の言葉に、周囲の男子も一斉に頷く。
俺は助けを求めて小恋達に視線を向けたが、彼女達は同情した様な顔をしたまま肩を竦めるだけだった。