Remix Heart


□Remix Heartー第五章ー
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義之side
12月21日(日)
昼:芳乃家・居間

アナウンサー『――州証券大手、“キーマンブラザーズ”が経営破綻した事で――――』

 日曜日の昼下がり。

 テレビでも見ながら適当に台本に目を通そうと思っていたが、最近の金融危機に関しての特番ばかりが放送されていたので、何だか一気にやる気がなくなってしまった。

アナウンサー『軒並み株価が急落し、世界経済が急減速していますが――――』

評論家『そもそも、個人法人問わず、投資家達が目先の利益を優先した為に――――』

 ネジが抜けた様な顔をした女子アナが、チラチラと原稿に目をやりながら今後の動向について尋ねると、バーコード頭の偉そうなおっさんがふんぞり返りながら答える。

 「そもそも」を繰り返し、世界経済に疎い俺でさえ脱線しまくっていると分かる程――やたら自分の持論を展開したがるその様は、皺だらけでぶよぶよの容姿と同じ位に鬱陶しい。

 やる気がなくなった事に加え、昼食を食べた後だという事もあり、段々と瞼が重くなってきた。

義之「あ〜ぁ・・・・眠ぃ・・・・・・」

 上映の終了を報せる幕の様に、するすると下がる瞼を止める事なくコタツに突っ伏す。

 やってらんねぇ。 俺は寝る。 おやすみ、えぶりばでぃ。

音姫「おっじゃましま〜す♪」

義之「・・・・・・」

 しかし、まるで計ったかの様なタイミングで乱入してくる人物が一人。

 返事も待たず、パタパタと廊下を走ってくるその人の表情が、容易に想像出来てしまうから怒る気もなくなる。

 きっと、絶対、へにゃっとした笑顔に違いない。

音姫「弟君〜、遊びに来たよ〜♪」

義之「・・・・・・・・・・・・」

 勢いよく襖を開け放って居間に入った音姉は、入ってきた時とは反対に静かに襖を閉めてからこちらに向かってくる。 その表情は、予想通りにへにゃっとしただらしない笑みだった。

音姫「うふふふ♪」

 そして、そのままそそくさとコタツに入ってきた。 然もそれが当然と言わんばかりに、俺の隣に、だ。

 突然の乱入者の登場で中途半端に目が覚めて、「さて、どうしたものか」と、思案していると、音姉が「あっ」と声を上げる。

 何事かと確認するより早く、音姉は“それ”を手元に寄せ、パラパラとページを捲った。

音姫「これ、人形劇の台本だよね? 本番まであまり時間ないけど大丈夫?」

義之「ん? 大丈夫、大丈夫」

 食い入る様に台本を見る音姉を見て、嫌な予感が走る。

 俺は適当に話を打ち切ろうとしたが・・・・

音姫「お稽古、いっぱいしないと大変だよ? そうだ、お姉ちゃんがお稽古の相手をしてあげるよ。 ほら、テレビなんて見てないで練習練習♪」

義之(失敗した・・・・・・)

 居間でテレビを見ながら、適当に練習しようとした罰が下ったのだろうか?

 新しい玩具を手に入れた子供の表情をしている音姉を見て、思わずため息が零れた。

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